特定秘密保護法を成立させ、集団的自衛権を閣議決定させた安倍内閣は、外国の脅威を煽る一方、テロに対する原発の脆弱性さについてはどのように考えている のだろう。また、最近の御嶽山噴火や集中豪雨等、東日本大震災のみならず常に自然災害の脅威にさらされる我が国で、原発を守る体制はどれほど整備されてい るのか。テロと自然災害に対する原発の備えについて、京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さんに聞いた。(ラジオフォーラム)

ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん

ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん

◆日本の原発は隙だらけ?

ラジオフォーラム(以下R):
小出さんは、安倍内閣の下で閣議決定された集団的自衛権についてどうお考えでしょうか。

小出:もう憲法に全く違反していると私は思います。日本国憲法前文には、政府の暴走を防ぐためと明記されているわけで、憲法問題もきちんとやらないまま、解釈だけで変えるなどということは、それを踏みにじるような行為だと私は思います。

R:政府は盛んに北朝鮮が脅威だというようなことを言っています。それではなぜ、日本海側にたくさん原発を作ったのでしょうか。

小出:全くマンガのようなことですね。私自身は、朝鮮民主主義人民共和国が日本を攻撃してくるなどとは全く思っていません。けれども、もし本当に外国が攻撃してくると考えるのであれば、原子力発電所を持っているということは最大の問題になってしまいます。

R:小出さんは以前の番組でも、「原発は実は天井が薄いので、上から飛行機などが落ちたらすぐに壊れる」とおっしゃっていましたね。

小出:はい。要するに、天井というのは梁で支えるわけですけれども、原子力発電所のような巨大な建物では、梁で 支える重量にも限界があります。そのため、横側の壁は確かに分厚く造ってあるのですが、天井は薄いのです。もし、上方向から攻撃を受けるようなことになれ ば、簡単に破壊されると私は思います。

ただ、原子力発電所というのは、もともと非常に複雑な機械ですから、原子炉本体を破壊する必要など全くないのです。例えば、制御室を破壊してしまっ てもいいわけですし、原子炉本体とつながっている配管を破壊してもいい。そういう、攻撃というものに対しては大変弱い構造になっています。

R:例えばですね、原発の敷地外の高圧電灯や送電線が何らかのトラブルにより壊れたとすると、停電をして冷却ができなくなってメルトダウン、というのはあり得るのでしょうか。

小出:もちろん、あり得えます。福島第一原子力発電所の事故も、外部の送電線が倒れてしまって、外部から発電所に電気が来なくなったということが非常に重要な原因の一つでした。外部電源を断つということは、原子力発電所の弱点を攻撃する、かなり有効な手段だと私は思います。

R:ほかにどのような事態が想定されるのでしょうか。

小出:例えば、米国などは原子力発電所の脅威となりうる大きな問題として、サボタージュやテロなどを想定してお り、軍隊で原子力発電所を守っています。その点、日本は、一方で他国の脅威をあおりながら、原子力発電所は決して事故を起こさないというようなことをいま だに言い続けているという人たちがいるわけで、平和というか、平和ボケというか、大変不思議な国だと思います。
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