◆町の約4割はいまもイスラム国が支配

シリア北部の町コバニ(アラブ名アイン・アル・アラブ)はクルド人が多く暮らす町だ。ことし9月、町はイスラム国が侵攻し攻撃を受け、住民のほとん どがあいついで脱出した。現在、クルド組織、人民防衛隊YPGとイスラム国が激しい戦闘を繰り広げている。この町に1年ぶりに入った。(玉本英子)

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ヒュー、ドーン...。雷のような音が響き、地面が揺れる。わずか1~2キロ先のイスラム国から無差別に撃ちこまれる砲弾だ。

「最新兵器で侵攻してきたイスラム国は手ごわい」
YPG戦闘員のひとりが言う。

イスラム国は、ことし6月にイラク第2の都市、モスルを掌握した。敗走したイラク軍の基地から最新鋭の武器や戦闘車両を奪取、なかにはアメリカ製武 器もあった。その大量の最新兵器をシリアの前線に振り向け、それまで近郊地域での対峙が続いていたコバニに一気に攻勢をかけた。

3キロ四方ほどの小さな町は、その半分近くをまたたくまにイスラム国に制圧された。YPGと地元住民は市街戦でのぞみ、徹底抗戦し、わずかに押し返 したものの厳しい状況だ。9月末にはイスラム国排除のために米軍をはじめとする有志連合がコバニのイスラム国拠点への空爆を開始した。だがいまも包囲は続 く。

瓦礫と化したコバニ(アラブ名アイン・アル・アラブ)の町。4割近くは現在もイスラム国が支配、激しい戦闘が続く。(アレッポ県コバニで12月下旬撮影・玉本英子)

瓦礫と化したコバニ(アラブ名アイン・アル・アラブ)の町。4割近くは現在もイスラム国が支配、激しい戦闘が続く。(アレッポ県コバニで12月下旬撮影・玉本英子)

 

YPGの戦闘員とともに、防弾チョッキをつけて町を歩いた。空爆と砲撃で崩れ落ちた建物。果てしなくひろがる廃墟は、まるで映画のセットのようにも見える。周辺地域からの住民を合わせたおよそ20万人が隣国トルコに逃れた。

前線近くになると、パーン、パーンというイスラム国の狙撃手の撃つ銃声が、空気を切り裂くように響く。「弾よ、当たらないで」と瓦礫の中をひたすら走った。

1年前に訪れた時に見た、通りを行き交う人びとも商店の買い物客の姿はもうない。無人の市街に響く銃声と砲撃の音。涙がこみ上げてきた。【玉本英子】

10月の時点でのコバニ(アラブ名アイン・アル・アラブ)の状況。周辺地域を含めて約7万人だった人口は、内戦が激化すると周辺地域から避難民が流入し、一時は2倍近くにまで増加した。イスラム国が勢力を拡大すると国外脱出などで住民は減少。市街地ではイスラム国とYPGの激しい銃撃戦になっている。米軍をはじめとした米仏豪などの有志連合軍がイスラム国陣地に空爆をおこなっている。空爆作戦開始後、イスラム国は標的となった戦車をいったん撤退させたものの、迫撃砲やカチューシャ砲で市内に砲撃を続けている。

10月の時点でのコバニ(アラブ名アイン・アル・アラブ)の状況。周辺地域を含めて約7万人だった人口は、内戦が激化すると周辺地域から避難民が流入し、一時は2倍近くにまで増加した。イスラム国が勢力を拡大すると国外脱出などで住民は減少。市街地ではイスラム国とYPGの激しい銃撃戦になっている。米軍をはじめとした米仏豪などの有志連合軍がイスラム国陣地に空爆をおこなっている。空爆作戦開始後、イスラム国は標的となった戦車をいったん撤退させたものの、迫撃砲やカチューシャ砲で市内に砲撃を続けている。

 

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〔シリア・コバニ現地報告1〕 戦闘続くコバニ~クルド人民防衛隊イスラム国の拠点を奪還
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