◆無差別に撃ちこまれる砲弾

シリア北部の町、コバニは、3方向をイスラム国に取り囲まれ、北のトルコ国境は通過が制限されている。町の半分近くがイスラム国に占拠されていて、 そこからクルド人やアラブ人の市民が残る地区に毎日数十発もの砲撃が加えられる。どこに落ちてくるかも分からず、安全な場所はない。

16日、民家に落ちた迫撃砲弾で子どもを含む住民3人が死亡し、2人が重傷を負った。右の壁は砲弾の炸裂で吹き飛んでいる。「イスラム国は戦闘と無縁の市民まで殺す。子どもに何の罪があるのか」と憤る隣家の老人。(アレッポ県コバニで12月下旬撮影)

16日、民家に落ちた迫撃砲弾で子どもを含む住民3人が死亡し、2人が重傷を負った。右の壁は砲弾の炸裂で吹き飛んでいる。「イスラム国は戦闘と無縁の市民まで殺す。子どもに何の罪があるのか」と憤る隣家の老人。(アレッポ県コバニで12月下旬撮影)

 

イスラム国の攻撃が激しくなって以降、ほとんどの住民がトルコに逃れたものの、物価も高く、困難な生活を強いられている。言葉も違う隣国に避難するのを躊 躇し、この町に残る選択をする住民も少なくない。年老いた世代には、町を奪おうとするイスラム国に屈服することはできない、と最後まで留まることを覚悟す る人びともいる。

西部地区の住宅地。16日、ここに落ちた迫撃砲弾で住民3人が死亡した。現場にはいくつもの血だまりが、まだ地面に残っていた。ブロック塀が崩れ落 ち、鉄筋があらわになっている。中庭から家の屋根に伸びるコンクリートの階段には砲弾の炸裂で砕けたブロック片が散らばっている。

3日前、砲弾が着弾した場所には、血の痕がまだ残っていた。残された家族はコバニでの生活をあきらめ、トルコに避難した。(アレッポ県コバニで12月下旬撮影)

3日前、砲弾が着弾した場所には、血の痕がまだ残っていた。残された家族はコバニでの生活をあきらめ、トルコに避難した。(アレッポ県コバニで12月下旬撮影)

 

亡くなったのは地元のクルド人の主婦と12歳の男児、イスラム国支配地域から避難してきたアラブ人男性だった。電気や水もないなか、隣人として助け合いながら暮らしていたという。砲弾が炸裂した現場から数十メートルのところにいた隣家の老人は声を震わせる。
「イスラム国の侵攻から逃れ、わずかな食料のなか、なんとかこの町で命をつないでいたのに...」

この日の夕刻だけでも、数時間のあいだに50発以上の砲撃が集中して繰り返されたという。

「イスラム国は、私たちの土地を奪い、多くの住民が故郷を捨てて逃れなければならなくなった。イスラムの名の下に、戦闘とは無縁の市民を狙って殺すなんて。子どもに何の罪があるのか。イスラム国はイスラムでもなんでもない。宗教を殺戮のために利用しているに過ぎない」
老人は怒りをあらわにした。

【玉本英子】

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