◆核燃料棒、埋め捨てから方針転換か

R:福島第一原発では、燃料プールからの燃料棒の取り出し作業も進められていますが、それらの最終処分場はまだ決まっていませんね。

小出:今、1号機から3号機の使用済み燃料プールの中に、まだ燃料棒が眠っているわけですが、それらを放っておくことはできません。とにかく少しでも危険の少ない場所に移さなければいけません。

R:4号機はようやく移し終えましたよね。

小出:4号機はようやくにして移し終えて、私は本当にホッとしているのです。けれども、1号機から3号機でも当 然、移さなければいけません。でも、移したところで、その後どうするのかということは全く見えないのです。今のような危険な状態に置いていくことは当然で きませんので、やらざるを得ないだろうと思います。

熔け落ちている燃料デブリについても、もし取り出せるならば取り出すべきだと私は思います。けれども、取り出したところで、どうしていいか分からないのです。でも、取り出せるなら取り出した方がいい。しかしながら、それができないというのが私の見方です。

R:日本学術会議という科学者の集団が、いわゆる湿式であるプールではなく、また地下深くに埋めるのでもなく、 乾式、つまりキャスクに入れて空冷して、見えるところにそういうものを置き、100年単位のスパンでどうするかを考えながら、後世の人類の叡智にバトン タッチするという、そういう提言を出してきていますね。

小出:国の方は取り出したものはどこかに埋めて、埋め捨てにしてしまうというのがこれまでの方針でしたし、もうそれが法律ですでに定められているわけです。けれども、日本国内で埋め捨てにして、10万年、100万年も安全だというような場所はありません。

R:地震が多い国ですからね。

小出:ご存知の通り、政府からは、モンゴルに埋めてしまおうというような話まで出てきていたのですね。でも、そ んなことはやっぱりやってはいけないことなのです。日本学術会議という、いわゆる学者の国会と言われてきた組織が、これまでの日本のやり方はダメだから、 一から考え直せと、乾式貯蔵をして当面は監視するしかないだろうというような提言を出すようになっているわけです。私はもうかなり昔からそれしかないと 言ってきましたし、恐らくそうなるだろうと思います。
原子力発電所が「トイレのないマンション」と言われる所以は、この産業から生み出される膨大な廃物に行き場がないことだ。通常の発電ではもちろんのこと、 原発事故が起きてからは特に、放射能に汚染された低レベル放射性廃物が周辺環境で膨大に生み出されている。それでも原子力発電を続け、国内に処分場が確保 できなければ、外国に捨てればいいと考えるこの国は、もはや国そのものが「トイレのないマンション」になりつつあるのではないだろうか。

 

小出裕章さんに聞く 原発問題」まとめ

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