大阪市を廃止して五つの特別区に分割する、いわゆる「大阪都構想」をめぐる住民投票が今月17日に迫っている。医者が治療法のリスクを患者に説明するよう に、「大阪市解体」のリスクを住民に説明したい、そう考える学者による説明会が5日大阪市内で開かれた。その報告の三回目は都市計画としての「都構想」の 問題点が論じられた。
(新聞うずみ火 栗原佳子)

維新の党は、「都構想」に批判的な藤井聡京大教授を出演させないよう在阪テレビ局に圧力をかけた。写真は橋下市長と松井府知事ら 撮影アジアプレス

維新の党は、「都構想」に批判的な藤井聡京大教授を出演させないよう在阪テレビ局に圧力をかけた。写真は橋下市長と松井府知事ら 撮影アジアプレス

 

◆地方分権に逆行 最後で最大の東京追随策では活性化しない。

阪南大学元教授の木村収さん(地方財政学)も「都構想」が大阪の衰退につながるという意見だ。
「今回の『都構想』の問題は、126年の歴史の中で形成された大阪市という有機的総合行政体を解体し、一部事務組合を含めれば6つに分割するという、生木 を裂くに等しいもの。市町村合併を足し算とするなら廃止分割は割り算。それも割り切れない割り算だ。大阪の活力を削ぎ、長期低迷を生むだろう」
と警告した。

住民投票で賛否が問われる協定書についても、
「東京の都区制度に二重行政論をまぶした構成。地方自治法による基礎自治体重視の役割分担や地方分権の流れに逆行し、大阪の地域性を無視した都区制度もどきの広域自治体への集権体制が特徴だ」
と指摘した。

都市計画学が専門の奈良女子大教授の中山徹さんは
「大阪のこれまでの都市計画の問題は東京の真似を繰り返してきたこと。「都構想」は名前もその如くだが、最後で最大の東京追随策。

最後というのは、これで大阪市がなくなるかもしれないからだ。国際都市として発展するには、大阪の歴史文化を活かし、東京と違う独自性をどうつくるかが大事だが、「都構想」では大阪の活性化は望めず、破滅の道をたどるだろう」
と危惧した。

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