両江道恵山(ヘサン)市の肉体労働市場の実態について報告の第二回目。利権を巡り抗争、権力との癒着が横行している。(ペク・チャンリョン/訳・整理 リ・チェク)

米国からの支援食糧を貨車からトラックに積み替えている。労働者の労賃は荷量によって決めるのが一般的で、見物か現金で支払われるという。(2008年8月平壌市郊外 チャン・ジョンギル撮影)

米国からの支援食糧を貨車からトラックに積み替えている。労働者の労賃は荷量によって決めるのが一般的で、見物か現金で支払われるという。(2008年8月平壌市郊外 チャン・ジョンギル撮影)

◇抗争勝ち抜き「利権」掌握
たとえ重労働であっても、荷役の仕事を欲しがる男たちはいくらでもいる。私が恵山を訪れた当時、一般的な労働者の月給は1500~2000ウォン程度だった。それに比べると、1万ウォン前後の日当は大きな魅力だ。そのぐらいあれば、じゅうぶんに家族を養うことができる。

それだけの魅力的な仕事を差配し、賃金を決めるA社長の権威は絶対的なものがある。そしてその権威は、常にA社長の顔を立て、よくつき従う組長たちによって補強されている。

彼らはそのような地位を、決して易々と手に入れたわけではない。私はA社長の全身に、たくさんの傷跡があるのを知っている。人力市場は大きなカネを生むだけに、それを狙って多くの男たちが抗争を繰り広げてきた。

人力市場の仕切り役となり、その地位と利益を守るためには、暴力の行使においても力を発揮できなければならないのだ。A社長こそは、まさにそういった人物であり、彼に従う組長たちも、地元では聞こえた喧嘩の達人揃いなのである。

彼らは、恵山の人力市場を徹底的に仕切っている。仮に、A社長の承認なしに荷役労働者を募るような者がいたとしても、その人間は暴力によって排除されるリスクを覚悟しなければならない。また、恵山の農業大学の学生の中にも、生活費を人力市場での稼ぎに頼っている者が少なくない。

彼らの場合はA社長らの承認の下、クラス委員長が組長役を担い、何人かの学生をまとめるなどして仕事を得ているようだ。
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