◆「韓国に連れて行って」 取材協力者に脱北幇助頼まれる

長く取材を手伝ってくれている北朝鮮に住む協力者のキムさんから、突然「私と家族を韓国に連れて行ってくれませんか」と頼まれ、大いに当惑している。

キムさんとは、北朝鮮に密かに投入している中国の携帯電話で、週に1~2回連絡を取り合っている。4年前から北朝鮮内部の動きや民心を調査して知らせてくれている。

金正恩政権が2月にロケット発射した後、それと核開発に対する庶民の反応について報告してくれた後、ぼそっと、しかし嘆願するように、自身と家族の脱北を頼んで来たのだ。

金正恩体制になって、些細なことで地元の役人や幹部たちが逮捕されるようになった。職場や地域では、道路補修や田畑の草取りなどの奉仕労働に頻繁に動員される。

住んでいる北部の町では、電気や水道はほとんど止まったまま。怖い。しんどい。暮らしがよくなる見込みが見えない。一方で中国や韓国が目覚ましく経済発展したのを知っている。

「もう、うんざりなんです」と、彼は言った。キムさんは長く一緒に仕事をして来た仲間だ。できるだけのことはしてあげたい。しかし…。

「国境警備がどれだけ厳しいか、キムさんも知っての通り。脱北の手助けなんてとても無理ですよ。応援しますから、耐えてくださいね」。
私には、そう伝えるのが精いっぱいだった。
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