では、被災地の協同農場という悪条件に、当局は、どこの誰を移住させようというのだろうか? 前出の茂山在住の協力者は、次のように伝えてきた。

「同じ咸鏡北道の吉州(キルジュ)郡、金策(キムチェク)市、両江道の恵山(ヘサン)市などで選抜しているそうだ。対象は各地の保安(警察)署が「コチェビ」(浮浪者)や極貧層、居住登録せずに暮らしている人を選抜して送ることになった。彼らが住む住宅は、水害で死んだ農場員を補充する人員を移住させるために追加で建設された」。

恵山市に住む別の取材協力者に調査を依頼したところ、「水害被災地に移住させるために、市内の貧困層を対象に選抜が始まっている。『コチェビ』も送り出すことになった」とのことだった。

移住者の規模は数千人になると思われるが、それは北朝鮮当局が死亡、行方不明者を過少に発表していることを意味する。その理由について、脱北者のペク・チャンリョン氏は次のように解説する。

「毎年のように発生する自然災害に無為無策であったことを世界から隠し、膨大な犠牲者が出た責任について、批判と不満の矛先が指導者金正恩氏と政権に向かないようにするためだろう」。(石丸次郎)

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