◆店のシャッターに「ヤズディ」と書き、焼き討ちに

屋根は崩れ落ち、シャッターはひしゃげている。シャッターにはスプレーで文字が書きなぐってあった。

ISが公開した映像。シンジャル市内を歩く戦闘員の背後の店のシャッターにはスプレーで文字が書かれている。どれがヤズディかわかるよう区別するためだ。(2014年12月・IS映像)

商店街のシャッターに書かれたスプレー文字。「ヤズディ」と記された店は荒らされたり、破壊されるなどしていた。(2016年・イラク北西部・シンジャル・撮影:玉本英子)

 

「スンニ」「ヤズディ」「ヤズディ」「スンニ」…

ISはイスラム教スンニ派とヤズディ教徒の商店を区別し、ヤズディの店に火をつけるなどして破壊していた。

どの店がヤズディ教徒なのか、それを教えたのは地元の住民という。銃で脅され、ISに協力させられたイスラム教徒も少なくない、と地元住民は言った。ISの前で拒否できるはずもない。町のイスラム教徒も犠牲者だった。だがヤズディ住民のあいだには、「これまで一緒に暮らしてきたはずの隣人に裏切られた」という感情を抱き始めていた。

シンジャルの商店街で「ヤズディ」と書かれシャッターの商店の前に立つ。店の内部は焼けて黒焦げになっていた。(2016年・イラク北西部・シンジャル・撮影:ダハム・ラロ)

 

「たとえ町に戻れても、もう彼ら(イスラム教徒)を信じることができなくなってしまった」

ミルザは複雑な思いを打ち明けた。ISのシンジャル襲撃は、町を破壊しただけでなく、これまでと、もに隣人として暮らしてきた人びとの関係まで壊していた。
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