氷結した豆満江を渡ってきた北朝鮮難民男性に川辺に立ってもらった。 背後の山は北朝鮮。2001年1月に撮影石丸次郎

◆取締りの強化

1998年以降は中国側の難民取り締まりも厳しくなった。辺防部隊(辺境防衛武装警察隊)と呼ばれる国境警備隊が内陸に向かう幹線道路で検問を行い、越境者を匿っていないか抜き打ちで民家を回る。越境者が内陸に拡散しないよう水際で阻止する作戦であろう。村々の辻には、

「不法越境者を助けるべからず、留め置くべからず」

という札が立てられていた。違反した場合は2000~5000元(1000元は当時約1万5000円)の罰金が科せられる。

取り締まりの強化と、数が多すぎて援助の限界を超えているため、国境沿いに住む朝鮮族たちも、食事を与えたあとは越境者たちを突き放さなければならない。前出の金さんは両江道恵山(ヘサン)市から越境してきた実兄を匿っていたが、辺防部隊に見つかり2000元の罰金を払う羽目になった。幸い、匿っていたのが肉親だったので逮捕は免れたが、北朝鮮にできるだけ早く送り帰すよう命じられた。

「兄さん、もう来ないでくれ」

そう言って、金さんは血の繋がった兄に小金を渡して北朝鮮に送り出した。
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