◆動員前から広がる動揺

それを知った労働者の間で動揺が起こっているという。工場建設に動員されず鉱山に残った人々の配給が、動員に行った人々に出す毎日食事の分だけ減らされるのではないかというのだ。

「今、市場ではまったく稼げないので、住民の多くは職場の配給と糧穀販売所で売る食糧を当てにして暮らしている。誰もが職場から出る配給の量にとても敏感なのだ」

取材協力者はこのように言う。

2020年にバンデミックが始まって以降、金正恩政権は個人の経済活動を厳しく制限。市場ではコメやトウモロコシの販売を禁じ、一般消費物資の売買も強く制限されている。他方で、わずかな量だが企業での食糧配給を復活させ、「糧穀販売所」と呼ばれる国営の専売店で食糧を不定期に売るようになった。

現金収入が激減した都市住民は、否応なく配給や「糧穀販売所」に主食の入手を依存せざるを得なくなったのだ。

「(国は)まともに配給も出さないくせに、工場建設ばかりに集中しようとしていると、批判や不満を言う人が多い。動員で出て行くことになった茂山鉱山の労働者たちも、配給されたわずかな食糧でも、子供や家族とお粥でも食べていたのに、動員に行った後の家族はどうなるのかと、心配している人が大勢いる」(前出・取材協力者)

動員された労働者は3カ月ごとに交代させる計画だという。

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

 

 

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