第5独立強襲旅団・衛生中隊のデニス隊長。蘇生できた命もあれば、目の前で息絶える兵士も見てきた。(2025年4月・ドネツク州前線・撮影・玉本英子)

◆第5独立強襲旅団・衛生中隊の前線拠点

ドネツク州激戦地で戦うウクライナ軍・第5独立強襲旅団・衛生中隊。最前線拠点で苦闘する医師の姿を見つめた。全2回 2/2 (取材・写真・玉本英子)

デニス隊長(左)の厳めしい髪形は、ウクライナ伝統のコサック兵にあやかった「オセレーデツィ」のアレンジ。強面に見えるが、話しぶりは穏やかだ。(2025年4月・ドネツク州前線・撮影・玉本英子)
正式には、第5独立強襲キーウ旅団(5 ОШБр)。旅団章「槍の刃先で」の下に、衛生中隊のモットー「命を救う」が刻まれている。(2025年4月・ドネツク州前線・撮影・玉本英子)

◆「家族と故郷、命と尊厳のための戦い」

第5独立強襲旅団・衛生中隊を率いるのは、デニス隊長(38)。モヒカンのような厳めしい髪形は、ウクライナ伝統のコサック兵にあやかった「オセレーデツィ」のアレンジ。強面に見えるが、話しぶりは穏やかだ。以前は軍医で、2014年には一時、ロシア軍の捕虜となったこともある。その後はキーウの小児科病院の麻酔科医として働いていた。ロシア軍が侵攻した2022年2月24日当日、すぐさま旅団部隊に加わった。

以前は軍医で、除隊後はキーウの小児科病院の麻酔科医として働いていた。侵攻後、旅団部隊に合流。(2025年4月・ドネツク州前線・撮影・アジアプレス)

彼は当時を振り返る。

「あのときは勝利のためでなく、死ぬために戦いました。そんな覚悟でした。ここで勝てなくても、あとに続く者が侵略者を倒せるようにと。私たちは自分たちの家族と故郷、そして命と尊厳のために戦ったし、いまもそうです。誰かの利益のためなら、これほどの戦いはできなかったでしょう」

だが、圧倒的な兵力のロシア軍を前に、実際の戦争の現場は熾烈だ。

戦闘での死傷者は絶えない。負傷兵は、接敵ラインの少し後方にある「安定化拠点」に運ばれる。ここで応急処置を受けたのち、遠方の都市部の病院へと搬送される。

安定化拠点に搬送されてきた負傷兵。重傷者はここで応急処置ののち、遠方の病院に搬送される。(2025年4月・第5独立強襲旅団写真)
衛生中隊のマスコットの猫が隊員の心を癒す。ボディアーマー風ベストがかわいい。塹壕で犬や猫の世話をする兵士がたまにいたが、最近は偵察ドローンが猫の出入りの状況から潜伏位置を特定することもあり、完全な閉鎖空間以外では飼うのも難しくなったという。(2025年4月・ドネツク州前線・撮影・玉本英子)

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