
◆第5独立強襲旅団・衛生中隊の前線拠点
ドネツク州激戦地で戦うウクライナ軍・第5独立強襲旅団・衛生中隊。最前線拠点で苦闘する医師の姿を見つめた。全2回 2/2 (取材・写真・玉本英子)


◆「家族と故郷、命と尊厳のための戦い」
第5独立強襲旅団・衛生中隊を率いるのは、デニス隊長(38)。モヒカンのような厳めしい髪形は、ウクライナ伝統のコサック兵にあやかった「オセレーデツィ」のアレンジ。強面に見えるが、話しぶりは穏やかだ。以前は軍医で、2014年には一時、ロシア軍の捕虜となったこともある。その後はキーウの小児科病院の麻酔科医として働いていた。ロシア軍が侵攻した2022年2月24日当日、すぐさま旅団部隊に加わった。

彼は当時を振り返る。
「あのときは勝利のためでなく、死ぬために戦いました。そんな覚悟でした。ここで勝てなくても、あとに続く者が侵略者を倒せるようにと。私たちは自分たちの家族と故郷、そして命と尊厳のために戦ったし、いまもそうです。誰かの利益のためなら、これほどの戦いはできなかったでしょう」
だが、圧倒的な兵力のロシア軍を前に、実際の戦争の現場は熾烈だ。
戦闘での死傷者は絶えない。負傷兵は、接敵ラインの少し後方にある「安定化拠点」に運ばれる。ここで応急処置を受けたのち、遠方の都市部の病院へと搬送される。

























