◆市民監視や人権侵害が拡大するおそれ

また「外国情報活動への対処」とは、「外国の利益を図る」ために、非公開情報でその漏洩が「重要な国政運営に支障を与えるおそれがあるものを取得するための活動(これと一体として行われる不正な活動を含む)」への「対処」だという。

つまり外国のスパイ活動を防止するのが目的だというのだが、ここでもまた取得の対象が実際に「重要な国政運営に支障を与えるおそれがある」非公開情報かどうかは、時の政権の判断次第で、いかようにも拡大解釈できる。

人権擁護に取り組む弁護士の団体である自由法曹団が、今年4月30日に発表した「国家情報会議設置法案の廃案を求める意見書」も、次のように警鐘を鳴らしている。

「市民総監視のスパイ防止法・国家情報局法案反対!4・17議員会館前ペンライト行動」の参加者たち(2026年4月17日撮影)

「重要情報活動における『その他の我が国の重要な国政の運営に資する情報』の対象は極めて幅広く解釈でき、また『外国情報活動』における『これと一体として行われる不正な活動』とは、外国とつながっていると思われる活動を広く対象とすることができる」

「国家情報会議が行う情報収集には事実上歯止めがないに等しく、政府を批判する者は『中国のスパイ』などと誹謗される昨今の状況の下で、市民監視や人権侵害が拡大するおそれのある極めて危険なものといえる」
 
「これと一体として行われる不正な活動」とは、いったいどのような活動を意味するのか。この不正活動の定義もきわめて曖昧であり、やはり時の政権の判断次第で、いかようにも拡大解釈できる。

このことからも「外国情報活動への対処」において、外国のスパイ活動との疑いをかけられる対象は、必ずしも外国人だけではなく、外国と何らかの関わりを持つ日本人も含まれることがわかる。まさに「市民監視や人権侵害が拡大するおそれのある」危険性が秘められている。

「市民総監視のスパイ防止法・国家情報局法案反対!4・17議員会館前ペンライト行動」で発言する海渡雄一弁護士(2026年4月17日撮影)

前出の海渡雄一弁護士は今年4月17日、国会そばの歩道でおこなわれた「市民総監視のスパイ防止法・国家情報局法案反対!4・17議員会館前ペンライト行動」の主催者あいさつで、国家情報会議設置法や外国代理人登録法など「スパイ防止関連法制」の危険性を次のように訴えた。

「国家による市民監視が強まり、プライバシーが侵害され、憲法上の重要な権利である表現の自由が侵害されます。政府がやろうとする戦争政策に反対だと言うこと自体を、スパイなのだと、外国代理人なのだと、非国民だとレッテルを貼って黙らせようとする制度が完成し、日本が戦争のできる国に、戦争に反対することを非合法化してしまう国になってしまうおそれがあります。そうならないように反対していきましょう」(つづく)

吉田敏浩(よしだ・としひろ)1957年、大分県出身。ジャーナリスト。著書に『ルポ・軍事優先社会』(岩波新書)、『「日米合同委員会」の研究』(創元社)、『横田空域』(角川新書)、『昭和史からの警鐘』(毎日新聞出版)など。

■【連載】「スパイ防止法」は市民監視法になる

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