◆ジャマー突破する有線式ドローン
彼は、光ケーブルをひっぱってごらん、と私に言った。釣り糸ほどのケーブルを両手で思いっきり引きちぎろうとしたが、まったく切れない。「でもこうすると簡単に切れるんだ」と、ケーブルを小さな輪にして指先でつまんできゅっと軽く挟んだ。すると、ケーブルはプツンと折れて、切れた。引っ張る力にはかなり強いが、一カ所に力を加えて折る力には弱いのが光ファイバーケーブルの特性という。



小型ドローンが戦場で使われるようになったのは、シリア内戦が始まった10年以上前にさかのぼる。敵陣の偵察目的に加え、上空からの爆弾投下型も存在した。だが、高価な機体を使い捨てにする自爆ドローンの大量実戦投入が本格化するのは、ウクライナ戦争からといえる。
侵攻直後、ウクライナ軍は、空撮機能のある民生用MAVIC型ドローンを各部隊に送り、偵察目的で運用し始めた。当初は、機体が足りず、民間の企業や団体などから寄付される例も少なくなかった。その後、無線操縦式の小型自爆ドローンが、戦闘に投入される。いわゆる「カミカゼ・ドローン」だ。当初、優位を誇っていたのはウクライナ軍だったが、すぐさまロシア軍があとを追って自爆ドローンを投入。国家レベルで総力をあげて多様なタイプの機体を開発し、ウクライナ側は苦戦を強いられるようになった。


戦場に双方のドローンが飛び交い、車両被害や死傷する兵士が急増した。無線信号を遮断するために妨害装置(ジャマー)の導入が進み、車両のルーフや荷台には、ジャマーのアンテナが取り付けられた。ところが、ロシア軍は2024年春頃、無線を使わず、光ファイバーケーブル経由で信号を送ってコントロールする有線式を開発、夏にはクルスクでの戦いに投入する。

◆「無線式ドローンで戦場が変わり、有線式がさらにひっくり返した」
ウクライナ軍・ロシア軍とも、電子戦はレッブ(РЕБ)と呼ぶ。通信傍受、発信電波からの敵の位置特定、電波攪乱、妨害電波発信、自軍の通信防護などだ。ウクライナ兵たちは、車両のルーフに取り付けたジャマー装置もレッブと呼ぶ。各部隊にはジャマー装置の配布が進みつつあったが、有線式はジャマー自体を無意味化してしまった。

【動画】ウクライナ軍のバギー車両が、後方から突っ込んできたKVNドローンをギリギリのところでかわしている。(2025年・ウクライナ軍・第4レンジャー特殊作戦連隊映像)
有線式を見たときは驚愕した、とリース操縦士は振り返る。
「無線電波を使わないから、ジャマーが効かず、阻止できない。これまでの防御システムをゼロから見直さなければならなくなった。無線式自爆ドローンで戦場が変わり、有線式の登場が、さらにひっくり返した」
ウクライナ軍も開発を急ぎ、ほぼ1年遅れて現場運用が始まった。機体下部に2リットルのペットボトルより一回り大きい黒いケーブルタンクを装着する。内部は、リール状に巻いた細い透明の光ファイバーケーブルが入っていて、タンク後部から蜘蛛が糸を出すようにケーブルを垂らして飛行する。ケーブルを通して操縦信号と搭載カメラの映像を伝送し、オペレーターが手元のモニター画面を見ながら操縦する。無線、有線のそれぞれの方式に特性があるため、すべてが有線に置き換わるわけではないが、防御対策は根本から防御対策は変更を迫られることになった。
























