◆国営商店…「価格局」が価格を決めていた

消費物資の国産化に注力してきた金正恩政権は、新型コロナ・パンデミックを契機に中国からの完成品の輸入を制限し、原材料を輸入して国営工場で生産。それを卸売りから末端の国営商店に至る国営流通網でのみ取り扱えるように制度変更した。既存の市場は、野菜や肉類などを除き、仕入れは原則的に国営商店から卸売りされる構造になった(市場については後述する)。
取材協力者たちによれば、各都市の国営商店は、資金不足の国家に代わってトンチュ(新興富裕層)の投資を受けて施設を拡充し、衣料品、菓子などの食品、石鹼などの雑貨など国産品のみを販売している(中国製品は外貨商店で取り扱う)。

重要なのは、人民委員会(地方政府)の「価格局」がすべての価格を決定するようになったことだ。2024年2月頃には、「国家唯一価格制」の導入が企図された。
「国営商店に200ページ程度の価格表冊子が配布された。品目ごとに細かく値段が決められた。ただし価格は変動がありうるそうだ」と、両江道、咸鏡北道の協力者が伝えていた。
この時、金正恩政権は全国一律の国定価格の設定を制度設計しようとしたとみられる。ただし、この目論見は猛烈なインフレの発生で霧消してしまった。アジアプレスの調査では、2023年1月と比較して、2026年6月初旬には、ガソリンが531%、軽油が567%、白米が454%、トウモロコシが124%、米ドルが715%、中国人民元が558%上昇している。
国産品の多くは、原材料を中国から輸入して生産しており、国際石油価格の高騰、外貨交換レートの変動などの影響を受けるのは当然だ。「国家唯一価格制」がいつ破綻したのかは不明だが、維持するのは当初から無理であった。
ただし、国営商店の商品価格を、「価格局」が決める制度には変化がない。「2日に一回程度、価格が変わっている」と5月に両江道の協力者が伝えて来ている。(続く)
※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。






















