◆「故郷と愛する人を守りたいという思いは同じ」

いまイワンが願うのは、同性愛者の兵士の法的な保護の必要性だという。例えば、同性パートナーとの関係を法的に登録できないため、戦死した場合、パートナーは遺体を引き取ることができず、遺族補償金の受給対象にもならない。同性婚でなくとも、パートナーが伴侶として法的に認められれば、状況は変わるだろう、と彼は話す。

「性的少数者の兵士たちに、法的な保護が与えられること。そうすれば、より高い能力を現場で発揮でき、軍にも利益となる」と話す。(2025年4月・ウクライナ南部・撮影・玉本英子)

「この国の領土、故郷と愛する人を守りたいという思いは同じです。性別、性的指向や性自認などに関係なく、平等に法的権利が与えられるようになってほしい。この問題にステップを踏み出す社会的な動きはありますが、政府の判断にかかわるレベルにはまだ遠い段階です」

ウクライナ軍でのLGBTの権利擁護を求める団体「LGBTの軍人たち」の SNSチャンネル。同団体の合同報告書(2025年)によると、「正確な統計は不可能だが、諸外国の軍隊の割合を当てはめるとウクライナ軍(約88万人)のうち、推定5〜10%(4万4000人以上)がLGBT+と考えられる」としている。 (2026年7月・撮影・玉本英子)
キーウの独立広場には、戦没兵士を追悼する国旗が並ぶ。同性愛者の兵士が戦死しても、パートナーは家族、配偶者とは扱われず、遺体引き取りや遺族補償金が受け取れない現実がある。(2024年3月・キーウ:撮影・玉本英子)

ロシア軍のなかでは、同性愛者が公然と兵士として服務することは不可能だ。他方、NATO加盟国の軍隊では、同性愛者の軍務を禁止しているトルコを除いて、国ごとに程度の違いはあるものの、総じて包容的である。ドイツ連邦軍やオランダ軍のように、同性愛者の兵士に一定の人権的保護が与えられている国もある。米軍では、1990年代前半までは同性愛者は排除対象だったが、のちに性的多様性推進(DEI政策)がはかられてきた。トランプ政権はこれを見直す方向へと転換し、とくにトランスジェンダーの兵士を制限する方針を打ち出している。

「性的少数者の兵士たちに、法的な保護が与えられること。そうすれば兵士は、より高い能力を発揮でき、軍にも利益となるはずです」

イワンは力を込めて言った。

「これまで軍内部では同性愛者への偏見があったが、みな、ともに戦っているという意識が広まり、現場の空気が少しりつつある」という。(2025年4月・ウクライナ南部・撮影・玉本英子)

 

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