◆「作業員のやけど」が開発のきっかけ
米軍基地内での石綿除去に1980年代後半から参入し、日本における石綿除去の“草分け”の1人である米山氏は、防護服の輸入・販売なども手がけつつ、約40年にわたってこの業界にかかわってきたベテランである。
本製品を開発したきっかけは、外壁などに使われる石綿を含む仕上塗材の除去で、はく離剤の使用が増えるにつれて、防護服を卸している石綿除去業者から、2020年ごろに「(薄手の)防護服で(はく離剤の)薬品が腕に垂れてやけどするので、防護服の腕だけ(浸透しない素材に)変えられないか」と相談されたことだ。
そんな一言から、猛暑や酷暑で5月ごろから石綿除去の作業員が熱中症で倒れるといった事例が相次ぐようになっていたこともあって、「防護服が何十年も変わっていない」状況をなんとかしたいと考えるようになった。
「涼しくしたい。それも陽圧でいけないか」
それが最初のイメージだった。そんな方向性で米山氏は検討を始めた。
だが、当初UPCに開発を相談した際、「有害粉じんから保護するための防護服に穴を開けるバカはお前くらいだ」といわれたという。
そんな批判にもめげず、実験を始めた。
「(排気用の)逆止弁の位置で破れたり、座った時に破れたり。(逆止)弁の場所によっても、うまく排気されずぜんぜん涼しくないとか……。なんだかんだ約5年前からやっていて、この形になるまで3年くらい(防護服を)切ったり貼ったりしています」(米山氏)
その後も細かな修正を繰り返して、「最終的にいまの形になったのが約2年前」(同)という。
冷やすためにペルチェ素子ユニットを使うことは当初から決めていた。頸動脈を冷やすのがもっとも効率的なので、当初そちらにベルチェ素子ユニットを配置することも検討したが、防じんマスクが邪魔になって上手くいかず、電源の問題や装着するユニットを減らすといったことから現在の形になった。
高所作業時の落下防止に使う安全ベルト「ハーネス」を使用する際にベルトで固定するため、防護服の陽圧部が締め付けられてしまい、空気が遮られてしまうとの問題も生じた。それについても、背中にポケットを作り、空気の流れを遮らない「軽量樹脂パッド」を入れることで解決した。
「石綿除去をしても、(自宅に石綿を)持って帰ったり、熱中症で倒れたりせず、家族のもとに安全に帰れるようにしたい」との米山氏の思いに建設資材レンタル大手、日建リース工業営業本部事業開発部長の大森道生氏が共感し、販売を同社が担う形でタッグを組むことになった。
「環境を守る工事で危険だから防護服を着用するわけですが、そういう人たちが少しでも安全で快適に作業をできるようにしたい」と大森氏は語る。























