イラン人席との緩衝地帯も有効に。大きな応援幕を敷く日本側サポーター。

アウエーの洗礼 

在留邦人日本人会を乗せた大型バス6台がスタジアムに到着したのは、午後4時過ぎのことだった。フリーの2階席にすら座れなかった若者たちが、スタジアム周辺にあふれている。男ばかり。イランではスタジアムでの女性のサッカー観戦は認められていない。

ことサッカーに関してはその場の秩序が保たれなくなるおそれがあるからだ。バスに向かって若者たちが気勢を上げると、まるでサファリ・バスから野獣の群れを見下ろすかのように、企業の奥様方の顔が引きつる。

イラン人との接触を極力避けるため、日本人席の真裏にあたるスタジアム入場口にバスの頭を一台ずつ突っ込ませて下車させるという、日本・イラン両当局の配慮ぶりであった。

薄暗い通路を過ぎると、西日に照らされた鮮やかな芝生が目に飛び込む。地鳴りのようなイラン人サポーターの喚声に足をすくませた日本人もいただろう。目が回りそうなほどウエーブがぐるぐる回っている。おまけに突然大音響で鳴り出すダンス音楽。踊り出すイラン人。

(朝からずっとあのテンションのまま!?)

思わず呆然として、ついイラン人への愛しさがこみ上げてくる。

日本人席はゴール裏1階席。その左右には10メートルほどの緩衝地帯が設けられている。イラン人エリアと日本人エリアを隔てる鉄パイプで組まれた柵沿いには、警官が何人も配置され、イラン人サポーターが柵を乗り越えたり物などを投げないよう見張っている。日本人の女の子に向かって、柵から乗り出すように手を振ったり、カメラを向けたり、手を合わせて拝むような仕草でおどけて見せる若者がいる。

いつまでこんなに友好的な空気が続くのだろうか、と思っていた矢先、「バコンッ」という音とともに何かが頭上から降ってきた。水の入ったペットボトルが2階席から投げ込まれたのだ。その後も小石や棒切れなどが散発的に落ちてくる。こうした事態を予測していた日本人学校の関係者が、用意していたヘルメットを子供たちに配布する。ほかにも独自でヘルメットを持参した企業や団体も見られた。

青一色の遠征サポーター。頭上のイラン人席からしばしば攻撃にあう。

 

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