7月も半ばを過ぎた頃から、若者たちのレバノン行きを否定する発言が、イランの政府関係者から相次いだ。バスィージの司令官も「(志願兵登録センター等は)国の正式な機関とはまったく関係がなく、(民間の)宣伝活動にすぎない」と述べ、火消しにやっきになった。

今回、イスラエルがレバノン南部への空爆及び地上部隊の派遣により本格的な戦争を開始したのは、ヒズボラによって二人のイスラエル兵を人質に取られたことを口実に、この際、ヒズボラを徹底的に叩いて壊滅させようというのが真のねらいだったと言われる。と同時に、これまでヒズボラを支援してきたシリアとイランも巻き込み、一機に中東大戦争に発展させ、アメリカの大中東計画を遂行してしまおうという意図を、イラン政府が警戒していなかったはずはない。

イスラエル軍は今回、シリア・レバノン国境付近を何度も空爆し、トラックに果物を積み込もうとしていたシリア人農夫33名を殺害している。また、シリア国境付近に無人偵察機を飛ばすなどして散々シリアを挑発してきた。まずシリアに、そしてシリアと盟友関係にあるイランに戦火が拡大する可能性をイラン政府は十分警戒していたはずである。

イラン政府は、国家としては当然の行動として、戦争に巻き込まれぬことを第一命題としながら、その一方で、イスラム諸国会議機構にレバノン支援の会議も持ちかけ、内外に反米・反イスラエルのプロパガンダを打ちまくり、国内に対しては、ムスリムとしての精神的な支援こそレバノン市民とヒズボラの戦士たちを勇気付けるものだと呼びかけた。

町の至るところに張り出されたハサン・ナスロッラー師のポスターも、募金を呼びかけるバスィージのテント小屋も、そうした活動の一貫であろう。国営企業や官公庁では、月の給料の一日分をレバノン市民のために寄付しましょうと呼びかける張り紙が張られ、応じる社員も多いと聞く。

「中東で事が起こったからと言って、すぐに軍隊を送れという話にはならないよ。彼らは彼ら自身の国のために戦っているんだ。僕らはそれに対し、こうしてお金を集めて政府に預け、食糧や毛布やテントや医療品を送る。君たちの国のピースウインズジャパンがやっていることと変わらないさ。つまりNGOだよ」
着飾った、派手な女の子が行き交う週末の繁華街、粛々と募金活動を行う黒服のバスィージの青年が私に語ってくれた。

そのテント小屋では、募金とともに、ヒズボラ所有の衛星チャンネルの映像を大型テレビで流していた。
「こうしてヒズボラの映像を流すことも文化的支援の一貫さ。何より大切なのは、ムスリムとして自分の存在を示し、かれらに一人ではないことを教えてあげることさ」(つづく)