「イランではいつの時代も、こっそり自分のポケットをいっぱいにしているやつらがいたもんさ。今だって変わらんよ」
町の人は、この物価高の責任が誰かといったことにはあまり関心がないらしい。もちろんラフサンジャニー師が関与している証拠はなく、だから大統領も名指しはしない。いずれにせよ、市民は怒りをあらわにすることもなく、どこか諦めた様子で、暴風雨が吹き去るのを待つかのように、この物価高にもじっと耐えている。

ある農業省関係者は言う。
「米の値段が上がっても、もう一つの主食ナン(パン)の値段は、政府が補助金を設けているので上がっていない。食うに困らないうちは暴動なんて起きないでしょう」
イラン人は国産米をこよなく愛するため、国際市場における米価の高騰がイランの国内市場に影響を与えることはあまりないだろうと以前に書いた。しかし、小麦は違う。来年は、今年の旱魃の影響で国内産小麦の収穫は必ず減り、輸入に多くを頼ることになる。しかし国際市場でも、各国輸出規制を設け、価格急騰が予想されている。

「それでもイランはオイルマネーにものを言わせて小麦を買うでしょう。それが地下資源に裏打ちされたこの国の強みです」(同農業省関係者)
どんなにインフレが激しくても、イラン政府が国民を飢えさせることはないのだろう。しかし国民の心に澱のようなものが少しずつ溜まってゆくのを感じるのは気のせいだろうか。あるタクシー運転手は私にこう言った。

「最近は高いから、米を食べる機会は減った。外国米を食べるくらいなら、ナンを食べた方がマシだよ」
イラン人にとって、それに代わる食べ物はないと言われるイラン米。その米を控え、ナンを食べる気持ちはいかばかりだろうか。

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