前回のアテネ五輪で、柔道66キロ級の優勝候補だったイラン人選手が一回戦でイスラエル人選手に当たり、棄権したことは記憶に新しい。しかし、それ以前もそれ以降も、国際試合という場でイランはイスラエル相手にこうした政治的棄権を繰り返してきた。
この新聞記事によれば、IOCイラン・オリンピック委員会の事務局長はこの問題について次のように語っている。

「イランの選手はシオニスト体制の代表とは対戦しないことになっているが、競泳では、組ごとに(8人で)競われることから、対戦とは言えず、このような問題は存在しない。今回、イランのアリレザイー選手は1コースを、シオニスト体制の代表は7コースを泳ぐ。そうしたことからも、両者が対戦することにはならない」。

モハンマド・アリレザイー選手は、男子100メートル平泳ぎの代表で、今期オリンピックの競泳種目に出場するただ一人のイラン人選手であり、なんと、イランからオリンピックの競泳種目に出場するのは、彼が初めてだという。そうしたことからも、イラン・オリンピック委員会の事務局長の発言からは、なんとか彼を泳がせたいという気持ちがにじみ出ている。

確かに、柔道やレスリングと違い、8人一斉スタートの競泳で、しかも1コースと7コースでは「対戦」とは言えない。しかし、もしこの二人が1位2位を争うようなことになったら、あるいは最下位を争うようなことになれば尚更、問題が生じるのだろうな、と私は意地の悪い期待をかけながら、翌日に行なわれる予選を楽しみにした。
果たして、予選結果は、アリレザイー選手の「棄権」だった。(つづく)