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【空爆翌日の朝刊トップ。『ガザ 声なき叫び』】(撮影:大村一朗)

イランのメディアでパレスチナのニュースが流れない日はない。その日パレスチナで、イスラエル軍によって何人のパレスチナ人が殺害され、負傷し、連行されたかが必ず報じられる。テレビであれラジオであれ、番組制作の現場では、次のニュースの放送直前までそうした人数がリアルタイムでチェックされ、上書きされる。

12月27日は昼すぎまで、その日のパレスチナのニュースは「拘束者3名」という、いつもよりも地味なものだった。そのわずか30分後、新しく入った「死者120名以上」という数字に、私の上司は悲鳴のような声を上げた。
その日、イランのメディアはガザ空爆のニュース一色に変わり、テレビでは、どのチャンネルも画面の隅に服喪を示す黒いマークや縁取りが施され、ニュースチャンネルでは目を覆いたくなるようなガザの凄惨な映像であふれた。

それから4日間、ガザでの空爆はいまだに続き、死者は370名を越えた。この間、国連ではイスラエルに対する非難決議一つ出すことができず、日本を含めた西側の報道では、この空爆の目的を、ガザを拠点とする「テロ組織」ハマスからのロケット砲攻撃を阻止するためのイスラエルによる「自衛行為」であるとし、あたかもイスラエルに理があるかのような報道さえ見られる。

ハマスによって、ガザからその周辺のユダヤ人の町に、毎日のようにカッサム砲や迫撃砲が打ち込まれているのは事実である。だが、それらは手作りの、標準すら合わすことの出来ない短距離小型ミサイルであり、これによってイスラエル人が負傷したというニュースは有っても、死亡したというニュースはほとんど見ない。

だが、そうしたミサイルを打ち込まれるガザ地区周辺の町々では、政府に対応策を求める声が激しく、民主国家の体裁を整えるイスラエルでは、そうした声を無視することはできず、防空システムに巨費を投じたり、ハマスに砲撃をやめさせるよう諸外国に訴えたりしてきた。今回の空爆が、ハマスからの砲撃云々やイスラエルの自衛行為であるとする見解が西側から出てくるのはこのためだ。

しかし、イランにいて毎日パレスチナのニュースに接していると、ハマスによるカッサム砲の乱れ打ちに対して、イスラエル軍は軍用機などでハマスや抵抗グループのメンバーらをきっちりと狙い打ちし、多くの民間人も巻き添えにしてきた。

その上、長期にわたってガザ地区を封鎖し、食糧や燃料、医薬品の搬入を妨げてきた。そうした困窮状態に耐えてきたガザの住民に、今さらに空爆を加え、400名近い住民を殺害することが、果たしてガザ周辺で迫撃砲におびえるユダヤ人住民を安心させるという目的に適うものと呼べるのだろうか。

イランは、今回のイスラエルによる空爆の目的を、来年2月の総選挙を見据えての、ガザの完全制圧とハマスの壊滅を目的としたものだとしている。もしそうなら、民主主義が暴力を生み出す衆愚政治の典型と言えるだろう。

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