大村一朗のテヘランつぶやき日記~ノウルーズの終わりに 2009/04/02

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【スィーズダ・ベダルのピクニックを楽しむ人々】(テヘラン/撮影:佐藤左知子)

 

テヘランつぶやき日記
3月21日にイラン暦は新年を迎え、イラン正月ノウルーズも今日で13日目。この日はスィーズダ・ベダルと呼ばれ、家の中にこもっているのは縁起が悪いとされ、家族そろってピクニックに行くのが慣わしだ。

スィーズダ・ベダルはノウルーズ同様、イランがイスラム化する前からこの国にある慣習だ。迷信をひどく嫌うイラン政府は、スィーズダ・ベダルという名前すらも極力使うことを割け、「自然の日」という名で休日としている。

折りしも、春の陽気でぽかぽかと暖かく、13日間の休日でテヘランの大気汚染も一掃され、僅かに山肌に残るエルブルースの残雪もくっきりと拝める。毎年この日はピクニック日和である。

我が家は午前中、お茶とお菓子を持って家を出た。正月飾りのサブゼ(青草)も忘れず持って出る。サブゼはこの13日間成長しながら、これからの1年間に家族に起こる病気や悪い事を吸収しているとされ、これを13日目に外へ捨てに行くのもスィーズダ・ベダルの重要な行事なのだ。

一説では、流れる水の中へ投げ捨てるのが良いとされているが、今ではほとんどの場合、ピクニックに出かける車のボンネットの上に乗せ、自然に落ちるのを待つという捨て方が定着している。この日、町にはボンネットに青草を載せた車と、道路でペシャンコにつぶれた無数の青草を見かけることになる。

車のない我が家は、タクシーを捕まえ、運転手さんに頼んでサブゼをボンネットに乗せてもらった。この変わった習慣は、恐らくテヘランをはじめとするイランの多くの都市には、水量豊富な川がほとんどないことが原因かもしれない。

到着したのは市街地の小高い山にある森林公園。すでに多くの家族連れで込み合っている。皆、簡易テントと食事とお茶の道具一式を持ち込んで、快適に過ごしている。キャバブの焼き台や水タバコを用意している家族連れも多い。日本のお花見の雰囲気にそっくりだが、お酒は存在しない。

しかし、混雑しているのは駐車場周辺だけだ。山の散策路を登ってゆくと、次第に人影もまばらになり、空気も花をきれいで、見晴らしも良い場所には、ほとんど人がいない。自然の中で過ごす一日なのに、なぜか皆、高速道路の真横にある、麓の駐車場から離れようとしない。

イラン人は本当にピクニックが好きで、御座を敷いて外でお茶や食事を楽しんでいる家族連れの姿を普段でもよく見かけるが、いつも気になるのは、その場所の選び方だ。道路や歩道のすぐ脇の、何の風情もない、その場所の何に惹かれたのか聞いてみたくなるような場所でピクニックを楽しんでいることが多い。

2時間ほど静かな山歩きを楽しみ、帰りは親切な家族連れの車に乗せてもらい、帰路についた。明日、公休日の金曜が終われば、長かったノウルーズ休暇は完全に終わり、町はまた日常の喧騒を取り戻すだろう。