iran_0526.jpg

【埋葬地。場所を選ぶことはできない】(撮影:筆者/テヘラン)

テヘランつぶやき日記
大村一朗のテヘランつぶやき日記~テヘラン共同墓地ベヘシュト・ザハラーを訪ねて(3)  2009/05/23

◆死者の行く末を案じる
洗浄を終えた遺体は、親族の男たちの肩に担がれ、埋葬場所へと向かう。私は、24歳で肝臓を病んで亡くなったという青年の葬列とともに歩いた。

この青年のいとこだという男性が、肩を抱えられながら泣き崩れる人たちを指差し、あれが故人の母親、あれが半年前に結婚したばかりのお嫁さん、などと教えてくれる。つい昨日亡くなったばかりなのだから、死者との別れもまだ十分に出来ていないのだろう。泣き叫び、全身で悲しみを表している。

埋葬地には、網の目のように墓穴が掘られている。実際には、一つ一つ掘られたものではなく、巨大なプールのようなものをブルドーザーで掘り、その内部をレンガの壁で格子状に区切り、その一スペースが一人用の墓穴となる。深さは2メートルほどあり、上下2段に区切って二人を埋葬することも可能だ。

埋葬を前に、ここで最後の儀式が行なわれる。墓穴に横たわった死者に、最後の礼拝を行わせるのだ。白布の結び目を解き、死者の顔を少しだけ外に出してやり、その顔をメッカの方角に向けさせる。そして、あたかも生きている人間が礼拝を行なっているかのように、近親者がその肩をゆすってやる。

次に、聖職者が死者に向かって特別な祈りを捧げる。その中ではイスラムの預言者やイマームたちの名が唱えられる。埋葬された夜、死者の傍らに天使が現れ、そうしたことを試問するからだ。死者はそれに正しく答え、晴れてあの世へと旅立って行く。
最後に、遺体の上から泥が流し込まれる。泥で遺体を封じ込めると、上から石板で閉じ、その上にさらに土が盛られる。

墓穴の中に、故人の遺品を忍ばせる習慣はない。現世への執着を最も醜いこととするイスラムでは、物品を埋葬することはもちろん、死者に化粧をほどこしたり、美しく着飾らせたりすることさえ、無意味な行為とされる。イスラムでは、来世に持ってゆくべきものは、現世の行いだけである。それによって、最後の審判の日、地獄行きか天国行きが決まるのだ。
「裸でこの世に生まれてきたんだから、裸でこの世を去ってゆけばいい。死者に金持ちも貧乏もないでしょ」

スィーロスさんによれば、残された遺族にとって何より重要なのは、死者が楽園にゆけるかどうかだけだという。
死者を送り出した後、遺族は3日目、6日目、40日目に、改めて死者の追悼式を行なう。近所のモスクを2時間ほど借り切り、お坊さんを呼んで礼拝を行い、その後、招待客に昼食を振舞う。遺族は40日忌まで黒い服を着て喪に服す。
次のページへ ...