新しい携帯を買う

【携帯屋が並ぶアラジンバザール(撮影・筆者)】

テヘランつぶやき日記
大村一朗のテヘランつぶやき日記 新しい携帯を買う  2009/11/14
テヘラン中心部を東西に走るジョムフリー(共和制)通りには、「テヘランの秋葉原」と呼ばれる電気街がある。もちろんそう呼んでいるのは渡日経験のあるイラン人だけだが、何百軒という電気店がひしめくその規模と、市街の電気店よりも5%から10%ほどは安く買えることから、高価な家電製品の買い物に訪れるテヘラン市民でいつもごった返している。

ショーウィンドウに並ぶのは、今はやりの大画面の薄型テレビの数々。多くはドバイなどから入ってくる。不況も経済制裁も関係ない。
「薄型テレビの価格は年々下がり、売り上げは伸びているよ。イラン人は見栄っ張りだからね。親戚や近所が買えば、自分たちも、と競って買うんだ」

店番の若い青年が答えてくれる。そこは表通りから一歩入ったビルの中に面する小さなお店だったが、客は頻繁に訪れる。くまなく回って一番値段の良い店で買うのだろう。
僕が今日ここへ足を運んだのは、携帯を買うためだ。今使っている携帯はノキアの1200という、通話とSMS以外何もできない丈夫だけが取り得のシンプルなやつだったが、気軽に町の写真を撮りたいと思い、高画質の写真が取れる携帯を購入することにした。

事前に友人から、携帯を買うならジョムフリー通りの電気街にある「アラジン・バザール」に行けと言われていた。そこは、地下1階、地上4階の古いビルで、中にはたたみ一畳ほどの小さな店から、6畳間ほどの店舗まで、携帯関連のテナントばかりが2百軒ほども詰め込まれており、携帯を売り買いする人々であふれていた。

ショーウィンドーには、ノキア、ソニーエリクソン、サムスン、LGといったメーカーを中心に、見たこともないメーカーの端末も数多く見かける。どのメーカーのものも、最新機種が、恐らく日本より安い値段で手に入る。

イランの携帯システムはシンプルだ。SIMカードさえ電話会社から購入すれば、端末はどのメーカーの何という機種を選ぼうと自由だ。イランの携帯市場は、日本よりも真の市場原理が働いている数少ない市場と言えるだろう。

事前にインターネットで買いたい機種を決めてきて良かった。もし決めてこなかったなら、この巨大なバザールでどれを選ぼうか途方に暮れていたことだろう。僕の欲しかった機種は、すぐにいくつかの店舗で見つかった。そのうち一軒で値段を交渉。少ししか安くならなかったが、よしとする。もともとこういう交渉は苦手で、いつも関西人の嫁まかせなのだ。

隣の客が、ノキアの携帯を手に取り、フィンランド製か中国製かと訊ねている。正真正銘のメーカー品でも、イラン人は製造国を非常に気にする。僕もあわてて買ったばかりの携帯の箱を見た。「MADE IN HUNGARY」……。判断がつかない。

買ったのはノキアの1年前のモデルで、カメラの画質は「5メガピクセル」とある。しかし、携帯カメラの5メガピクセルは、デジカメの5メガピクセルの画質には及ばず、せいぜいデジカメの3メガピクセル程度でしかないという。しかし、店の兄さんが早速撮ってくれた僕のポートレートは、申し分のない画質だった。この日記に載せる画像としては十分すぎるくらいだ。

動画はもちろん、インタビューの録音も出来るし、これ一台で十分取材が出来てしまいそうだ。実際、選挙後の騒乱では、市民によって携帯で撮影された動画がインターネット上やBBCなどで世界中に公開された。市民による「携帯ジャーナリズム」に、このアラジン・バザールも一役買っているということか。