学生の日

【12月7日、テヘラン大学での学生デモ。携帯電話で撮影された動画がすぐにアップされないようにこの日は当局がインターネット回線の速度を最低限まで落としたといわれるが、たちまちのうちに動画が国外の動画投稿サイトに流れ、外国メディアがこれらの映像をニュースとして配信した。(写真は投稿動画の一部)】

テヘランつぶやき日記
大村一朗のテヘランつぶやき日記 「学生の日」(1)  2009/12/07
今日、12月7日はイランでは「学生の日」とされている。もとを辿れば、王政下の1953年のこの日、ニクソン米大統領のイラン訪問に反対したイラン人学生3名が治安当局に殺害された事件に端を発する。イランに数ある反米記念日の一つとして、毎年、保守系学生らによるセレモニーが行なわれてきたが、この日も例のごとく、改革派による反政府デモが行なわれると言われていた。

前回、大規模なデモが行なわれた「アメリカ大使館占拠記念日」からほぼ一ヶ月しか経っておらず、しかも、今回は元気の有り余った大学生たちが主役とあって、政府はこれまで以上に神経をとがらせている。報道によると、イランに駐在するすべての外国メディアに、7日から9日までの三日間、支局外での取材と国外へのレポート送信を禁止すると、当局から通達があったという。場合によっては、徹底的な弾圧も辞さないということだろう。

昼過ぎ、ゆっくりと家を出た。実際、集会が何時頃行なわれるのか報じられてはいない。場所はテヘラン市内の各大学の構内だろう。とりあえず、バスでテヘラン大学に近いエンゲラーブ広場に向かうことにする。
自宅から少し離れたバス停まで、商店街の下り坂をゆっくりと歩く。おじさんに、倒れたバイクを起こすのを手伝ってくれと呼び止められる。

手伝うと、笑顔で礼を言ってくれた。銀行のATMに並ぼうとしたら、「それ、壊れてるわよ」と近くにいた女性が教えてくれる。姿見を注文しようとガラス屋を覗くと、随分前に一度来ただけなのに、店の主人が僕のことを憶えていた。なんだか気持ちの良い日だなと思い、やっと気持ちが前向きになる。

この平和な場所から、わずか15分ほどで、バスは戦場に着く。いつもそのギャップに戸惑いを覚える。エンゲラーブ広場近くのバスターミナルは、テヘラン大学正門まで500メートルほども離れているが、そこにはすでに治安部隊が歩道に配置され、行き交う人々に厳しい視線を向けていた。改革派のシンボルカラーである緑を掲げている人は、一人も見当たらなかった。(つづく)

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