庶民の味・キャレパチェ

【キャレパチェ。たいした量ではないが、胸いっぱいになる……(撮影・筆者)】(2010/01/08)

テヘランつぶやき日記
大村一朗のテヘランつぶやき日記 ・庶民の味・キャレパチェ  2010/01/08
テヘランに赴任して2ヶ月ほどの記者Uさんが遊びに来てくれた。
以前お会いしたとき、毎日の食事の単調さにうんざりしていると言っていたので、今日は近所のキャレパチェ屋さんに連れてゆく。

キャレパチェとは、羊のキャレ(頭)とパーチェ(膝から下)を煮込んだ料理。つまり、羊を屠って、肉付きのいい大腿部や胴体を取った後の、あまり食べる部分のなさそうな場所を、じっくりことこと煮込んで、柔らかくして食べる庶民料理である。

店の入口に直径1メートルくらいの大鍋が二つならんで、白濁したスープの中で羊の頭が煮込まれている。店員さんが頭部を分解して、手で頬肉をそぎ落としたりしている。
品書きには、舌とか脛とか目玉とか脳とかいろいろ書かれているが、とりあえず一番上に書かれた「頭部各種盛り合わせセット」を二人前頼む。

テーブルにつくと、まず黄色い油の浮いた白濁スープが運ばれてくる。むわっと、結構強烈な匂いが立ちのぼり、普通の日本人だと軽くひるんでしまうのだが、Uさんは戸惑いもなくズズズっと飲み始める。これにナンを浸しながらちびちび食べていると、メインの皿が運ばれてくる。
実は、目玉や脳みそを食べる勇気がなくて、僕は今までこのセットを注文したことがなかった。これまでは頬肉と脛しか頼んだことがなかったのだが、今日は二人ということもあって、勇気を出してセットを頼んでみたのだ。

ところが、皿に盛られたものは、もうほとんど原形をとどめておらず、どれが何やら分からない。食べてみると、それぞれなにげに歯ごたえが異なるので、いろいろ入っているのは確かなのだろうけど。
くせが強いし、脂っこいので、レモン汁とシナモンを振りかけ、生の玉ねぎを齧りながら食べる。

このこってりと胃もたれしそうな料理を、イラン人は一日のスタミナ源として朝食に食べる人が多い。だからキャレパチェ屋はたいてい早朝から営業している。労働者の料理だった頃の名残だろう。
Uさんは店内に書かれたペルシャ語を読み上げたり、店員さんに挨拶したり、前回会ったときより随分とペルシャ語を覚えていることに驚く。町でいろいろな人と言葉を交わしながら、旺盛に言葉を学んでいるようだ。

5年前、単身イランにやって来て、語学学校に通い始めた頃のことを思い出す。あの頃は5年もイランに留まるなんて夢にも思っていなかった。好きだったイランの文化や人々の生活に触れて、それを日本に伝えられればと思っていた。政治的な問題に首をつっこむつもりもさらさらなかった。1年、長くても2年くらい滞在すれば、何か掴めるだろうと甘いことを考えていた。
他にも何かおいしい食べ物はないだろうか、とUさんが訊く。次回は、臓物の串焼き屋にご招待しようか。

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