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【初夏のテヘラン(撮影筆者)】

テヘランつぶやき日記
大村一朗のテヘランつぶやき日記 日本からの来客 2010/08/10
日本から来ていた客人が、3週間のイラン滞在を終えて、帰国の途に着いた。
50代後半の女性で、母の友人であるその人は、長年イランを訪ねることを夢見ていたそうで、このたび晴れてその夢を果たした。

インドに5回も一人旅をしたという渡航暦を持つ彼女だったが、イランに来た当初は、勝手の分からぬ初めてのイスラム圏、しかも日本では悪名高いイランという国に、かなり臆病になっていた。3週間の旅程のほぼすべてに、私か相方のどちらかが付き添ってくれるものとばかり思っていた様子だったが、毎日の出勤がある私はもちろん、手のかかる3歳の子供を連れた相方も、遠く地方へと彼女をエスコートするのは難しい。

そこでとりあえず、最初の一週間ほどは、テヘラン市内の博物館めぐりをしたいという彼女に極力付き添いながら、少しずつイランとイラン人に慣れてもらうことにした。
出勤前、その日に彼女が行きたい場所や美術館まで市バスを乗り継いで案内する。そして家への帰り方だけを教えて、後は自由に行動してもらう。最初の日、彼女は笑顔で戻ってくると、その日の出来事を楽しそうに話してくれた。年齢を問わず多くの女性たちが話しかけてくれたり、助けてくれたりしたという。
「ここは、こちらが笑顔を向けると、みんな笑顔を返してくれるのがいいわね。道を尋ねても、気持ちよく教えてくれるし」、
真夏の最中、スカーフとマントという、慣れないイランの服装コードを身に纏いながら、彼女は毎日のように市内観光に出かけていった。公共交通機関が完全に男女別の座席になっているのも、外国人女性の一人旅には幸いするようで、いつも近くにいる女性たちがたどたどしい英語で話しかけてくれたという。しまいには乗り合いタクシーまで乗りこなせるようになり、地方都市へも一人で行けると自分から言ってくれた。

「何かあったときだけ連絡するわね」と元気に言い残し、彼女は早朝のバスターミナルでイスファハーン行きの長距離バスに乗り込んだ。イラン中部の古都イスファハーン、そして南部の中心都市シーラーズとその近郊の古代遺跡ペルセポリスを訪ねる一週間の行程から戻った彼女は、すっかり日焼けして、テヘランの空港で出迎えた日の不安げな表情とは見違えるほど、たくましくなっていた。

「イランは、これだけの見所があるのに、しつこい客引きもいないし、親切に対して見返りを求めてくる人もいない。夜遅くまで街は明るくて、何より安心を覚えるのが、どこも子供を連れた家族連れでいっぱいなこと。お年寄りの夫婦が仲良く手を繋いで歩いていたりするし、何も怖くなかったわ」。

イラン人は実際、懐が広い。表情に余裕がある。困っている人に親切にすることを当たり前だと思っている。日常の中ですっかり当たり前のこととなり、忘れてしまっていた、この国の多くの良さを彼女は僕たちに再確認させてくれた。
それだけでなく、日本へ戻った彼女は、当初イラン行きに反対したという周囲の人たちに、きっとイランの良さを伝えてくれるだろう。