【テヘラン市街に野良犬の姿はなく、野良猫の楽園となっている。猫は不浄ではないので、迫害は受けない(撮影:筆者)】

teheran_diary0001大村一朗のテヘランつぶやき日記 犬の所持禁止法案 2011/04/20
イランで、ペットとその飼い主に受難の時代が訪れようとしている。イラン国会で「犬の所持禁止法案」が審議されているのだ。

イスラムでは犬は不浄な動物とされているが、近年、マルチーズやテリーなどの小型犬をペットとして飼う市民が少しずつ増えている。それでも、愛犬家が肩身の狭い思いをしているのに変わりはない。

私の知人は犬の散歩中に、子供に突然犬を踏みつけられたり、モスクの前で雨宿りをしていたら、邪険に追い払われたことがあるという。それに追い討ちをかけるように、国会の保守派議員たちがこの法案の審議を進めているらしい。

報道によれば、この法案を国会の専門委員会に提出した39人の議員たちの言い分は、「犬のような動物を飼うことは、衛生的にも社会の健全性にとっても有害だ」ということだ。このため、公共の場所にこうした動物を連れ出すことは禁止。違反者は罰金100万リアル(8千円)から500万リアルとその動物の没収。犬を散歩させるだけでなく、アパートで飼うことも禁止。

民家であっても住人の一人から苦情があれば、罰金と没収に処せられるという。
この法案審議を伝えるニュースサイトのコメント欄には、「なぜこいつらはこんな嫌がらせばかりするんだ」、「やるべきことは全てやって、他に問題は何も残っていないんだよ」といった反対意見や揶揄する書き込みが並ぶ。

そもそも、イスラムで犬が不浄とされる根拠は、経典コーランではなく、預言者ムハンマドがそう言ったからだという。このため、教義としてではなく、社会通念として、食べ物を扱う市場や礼拝所に犬が近づかないよう、イスラム教国では犬は街中から完全に排除されてきた。だが、社会通念を法制化して禁止しようとしてしまうところに、今のイランのイスラム体制の度量のなさが伺える。

この法案の提出者たちは、犬を飼ったり散歩させることは、文化的、社会的に大きな問題であり、西洋の俗悪な文化への追随とも見なされるとしている。犬を家族のように感じ、その存在に心を癒される市民が増えているという現実も、彼らの前では西洋かぶれの一言で片付けられてしまう。
法案の審議はまだしばらく続く。保守派が支配する現国会で、果たして自浄作用が働くのか見てみたい。
知人は、この法案が可決されたら地方の家族のもとに犬を疎開させると言っている。