【「ゼニヤーン」と「ヴァノシュク」。滋養強壮のため、胃が直ったあとも服用し続けている。(撮影:筆者)】

teheran_diary0001大村一朗のテヘランつぶやき日記  薬草学の国 2011/05/23
昼食を取ってしばらくすると、胃が張って苦しく、その後、じわじわと吐き気が襲ってきた。そして夜になって、とうとう耐え切れなくなり、嘔吐した。昼食で食べたハム入りピロシキがまずかったのだろうか。

胃をすっかり空にして、少しは楽になったが、全身虚脱状態で、足に力が入らない。ふらふらつく足取りで何とか帰宅したが、全身の筋肉が痛く、熱を測ると38度近い。一度吐いたくらいでこのダメージとは、年かな...、と気落ちもする。

家の近くのアッターリー(自然薬品・食材店)で、薬を買ってきた。アッターリーには様々な植物の蒸留水がボトルで売られており、それぞれ効能がある。「吐いて胃が苦しい」と店の兄さんに訴えると、ゼニヤーン(英語名ammi)という、セリ科植物の種子から採った蒸留水のボトルを出してくれた。「苦いけどな、胃にはよく利くぞ。朝夕2回、食後にグラス一杯飲め」と自信たっぷりに進めてくれた。

次の日は会社を休み、その翌日、なんとか出勤すると、私が食あたりしたと聞いた職場の一人が、「胃にいいですよ」と不思議な植物をくれた。「ヴァノシュク」またの名を「山ピスタチオ」という。酸っぱくて固い、熟す前のブドウのような味。
先のゼニヤーンもこのヴァノシュクも、インターネットで検索すると、イランでは古くから薬草として用いられてきたものであることが分かった。いずれも、食あたり、膨満感、胃酸過多、寄生虫など、胃の様々なトラブルに効くだけでなく、滋養強壮にも良いらしい。

中世、イブン・スィーナーなど世界的な医学者を輩出したイランは、当時から薬草学の先進国で、その伝統は今も残っている。街中のいたるところにアッターリーが店を構えているだけでなく、普通の人々でも、ほとんどの果物や野菜の医学的効能を知っており、どこか身体の不調を訴えれば、あれを食べろ、あるいは食べるなとアドバイスしてくれる。

近年、政府肝いりで、放射性医薬品や、癌やエイズの治療薬、ES細胞などといった最先端医療や薬品の開発がプロパガンダも兼ねて進められているイランだが、生活に根ざした医食同源の伝統は生活の隅々に残っている。それが、夏場のサンドイッチやピロシキの安全性に生かされていないことだけが残念でならないが......。