公開処刑

タリバンは通常の司法組織とは別に、宗教裁判所を設けていた。イスラム法に基づいて裁きをおこなう機関だ。2001年11月の政権崩壊直後、タリバンは宗教裁判所の書類を焼き払うなどしてカブールから敗走した。一方、タリバン拠点カンダハルの宗教裁判所は米軍の空爆で粉々に破壊されている。(2002年2月・カブール・撮影:玉本英子)

この映像が世界に報道されたことによって、国際的にタリバン批判が高まった。

野蛮、残虐、狂信者。こんな論調で、とくに欧米のメディアが「イスラム原理主義組織タリバン」の行為を批判した。

公の場での死刑執行には「見せしめ」「権力の誇示」などさまざまな意味合いがある。だが、公開処刑はアフガンに限ったことではない。

米国でも、オクラホマ連邦ビル爆破事件の犯人が薬物注射により死刑執行され、その模様は被害者遺族と報道関係者に公開された。「密室性の排除という観点から死刑は公開すべき」という論点の議論さえあった。イスラム法に基づく公開の処刑は、イランやサウジアラビアなどでも行なわれている。

宗教裁判所の書類の多くが焼かれたが、一部、判決文や調書が残っていた。写真は死刑判決を受けた2人の男性被告に関する文書。ザルミーナに関する文書を探したが、この宗教裁判所では見つからなかった。(2002年2月)

「死刑』という事実をとれば、ジョージ・H・W・ブッシュ米国大統領は、テキサス州知事時代(1995~2000年)に、152人の死刑囚に対して死刑執行の許可を出した。公開処刑だけをもってタリバンが残虐で過激集団と批判するのはおかしくはないだろうか。

そして日本にも死刑制度は存在する。もしその死刑執行の映像が隠し撮りされ世界に公開されたなら、日本は「野蛮で残酷な国」という批判を浴びるだろう。公開であってもなくても死刑は国家が人を殺すということにかわりはないし、私自身は死刑制度はあってはならないと思っている。(つづく)【玉本英子】

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(10)女子刑務所で 写真5枚
(9)タリバンは巨大な悪なのか 写真4枚
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(7)長女が語った意外な言葉 写真4枚
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