イラン社会を垣間見せてくれた、名前も知らない小さな友人。どんな大人に成長するのだろう(撮影筆者/テヘラン)。

◆歩道橋の思い出

2012年の年が明け、イランでの日々も残すところ2ヵ月を切った。その日、私はふと通りかかった歩道橋の上で、いつものようにあの少年の姿を探していた。彼がひょっこり戻ってきているのではないかと期待しながら。

我が家から歩いて15分ほどのところに、長い長い歩道橋がある。高速道路を渡るためのもので、長さは50メートルほど。渡ったすぐ先に、かつて通った大学院がある。あの頃、落ちこぼれ学生だった私は、行きも帰りも晴れやかな気持ちでこの橋を渡れたためしはなかった。

この歩道橋の真ん中で、すれ違いざま、十代と思しき不良二人組に殴り掛かられたこともあった。突然通りかかった外国人を後ろからけり倒し、日ごろの憂さを晴らすかのように、残酷な笑みを浮かべながら好きなだけ殴りつけ、他の通行人が現れると去っていった。昔習っていた空手は、何の役にも立たなかった。

苦い思い出の残るその歩道橋には、できるだけ近づかないようにしていたが、ピックアップタクシーではなくバスで通勤するようになると、また毎朝この歩道橋を渡るようになった。そうこうするうちに、つらい記憶は過去へと遠ざかり、それと入れ替わるように、その少年が私の前に現れたのだ。

歩道橋の中ほどに、いつも彼は佇んでいた。7歳ぐらいだろうか。くっきりとした目鼻立ちに栗色の短い髪。小さな両手にポケットティッシュをいくつも抱え、通行人が現れるのを待っている。彼がこの歩道橋の上に現れたのは、1年ほど前のことだ。

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