「厚木基地の滑走路は、かつてはベトナムに、いまはイラクに通じています。私たちの住む地域が、戦争の出撃拠点や訓練の場として使われるのは許せません」
これは、厚木基地周辺に暮らす住民のひとりから聞いた言葉です。

基地周辺に住む人たちは、日々、米軍機の激しい爆音にさらされています。空気を切り裂くジェット機の轟音は耳をつんざき、腹の底まで震わせます。耳鳴りや難聴、頭痛、動悸、不眠など、爆音による身心の不調を訴える人も多いのです。

「うるさいだけじゃなくて、恐怖を感じるんです。爆音が聞こえてくると身ぶるいがして、洗濯物を干していても家のなかに飛び込んで、耳をふさぎます。何も考えられません。墜落するかもしれないという不安もあるけど、音そのものが心を圧迫するんです、怖いんです。戦場ってこういうものなのかな、と思ったりします」
滑走路南端から数百メートルの所に住む、ある主婦はそう語りました。

このように基地周辺の住民たちは、上空を飛び交う機影と轟き渡る爆音を通じて、いやおうなく戦争の影を感じさせられる経験をしています。
これから私が記録し、伝えたいのは、爆音のない静かな空、血塗られた戦闘攻撃機の飛ばない空を、ほぼ半世紀にわたって求め続けてきた人たちの声と姿とその歩みです。
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