この「労務配置」と徴用を担当したのが厚生省だった。
戦時統制経済下にあった当時、国家が労働者を統制し、「労務者の移動」つまり雇用の流動化は望ましくなかった。
いまは新自由主義的なグローバル経済が広まるなか、企業のコストダウンと国際競争力強化のために、「労働移動の円滑化による人的資源の最適配分の実現」(経済財政諮問会議)を財界と政府が望み、市場原理に基づく雇用の流動化をもたらしている。

その方向性は違うが、労働者を「人的資源」と見なして、かたや国家総力戦の遂行のため、かたや国際競争力強化と経済成長のため、能率的に有効活用するという発想においては共通している。

いずれも「人的資源」を統制あるいは活用する側が主体的・能動的で、「人的資源」と見なされる側は客体化され、受動的な位置づけをされている。
「人的資源」とは、上から下へのベクトルに沿って使われる言葉であり、いつも統制・配置・活用・利用・投入・配分などの行為の目的語とされている。主語にはなれない言葉だともいえる。

この言葉はやはり、人間の手段化に結びついてゆく。~つづく~
(文中敬称略)

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