まさに廃墟と化した「順川ビナロン」の無残な姿を映像で見て、真っ先に筆者が思い至ったのは、この莫大な浪費の責任についてである。投入された北朝鮮民衆の労働、時間、知恵は活かされることなく無残に捨てられてしまったのだ。無駄になった莫大な費用も、結局、北朝鮮国民が負わされることになった。

在日朝鮮人からの「愛国献金」も使われたであろう。今日の北朝鮮経済の目を覆いたくなるような不振を考えると、役立たずの巨大コンビナートをほとんど活かさぬまま立ち枯れさせた責任はあまりに重大だと言わざるを得ない。その総責任者は故金日成主席であった。
(つづく)
注1 連合企業所----北朝鮮における重要な生産企業の事業形態のひとつ。技術や生産品目が関連する生産工場群をひとつの企業体にまとめて運営する場合が多い。従業員数万に及ぶ大企業所も少なくない。七〇年代から次々に設立された。例えば製鉄業の連合企業所の場合、鉱山、耐火物工場、製鋼所、輸送業などを結合させるケースが多い。「順川ビナロン」の場合であれば、核となるビナロン生産が石炭と石灰を主原料にするために、石炭火力発電所、カーバイド生産、化学肥料生産など関連工場をひとつの企業体に集約させた。原料供給、生産、輸送を円滑に行えるという利点が強調されたが、実際には図体が大きくなることで、ひとつの工場の稼働率が落ちると他の工場にも大きな影響が出るなど、非常に効率が悪い。

石丸に映像を説明するキム記者。

石丸に映像を説明するキム記者。

スクープ! 廃墟となった 巨大コンビナートを撮影 2
スクープ! 廃墟となった 巨大コンビナートを撮影 3
スクープ! 廃墟となった 巨大コンビナートを撮影 4

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