【この地方の名物、フェラーフェル。ひよこ豆のコロッケに、各種ピクルスのペーストと生野菜を自分でバゲットに挟む。(撮影・筆者 2010/11/08)】

テヘランつぶやき日記
大村一朗のテヘランつぶやき日記 フーゼスターン州への旅(3) 2010/12/08
ホッラムシャフルから、次の目的地アフワーズまでは120キロほど。ひまわりの種をぽりぽり食べていると、ものの1時間でバスはアフワーズ市街に到着した。

フーゼスターン州の州都アフワーズは、人口80万の大都市だ。アラブ、ファールス、ロル、クルドなど様々な民族が住むが、多くはアラブ人であり、ここより西に広がるアラブ世界の辺境と言っていい。町の中心ナーデル交差点は人と車でごった返し、クラクションとともにアラビア語の叫び声が飛び交っていた。

バザール周辺を中心に、いくつかのホテルや、メフマーンパズィールと呼ばれる簡易宿を回ってみた。ここ数年、宿代の値上がりは著しく、4、5年前なら日本円で2千円も出せば中級ホテルに泊まれたが、今ではトイレ、シャワーが共同の簡易宿が関の山だ。

子供を連れて旅をするようになってから、簡易宿に泊まる機会は減っていたが、今回は幸い、良い簡易宿を見つけた。気持ちの良い中庭を持ち、部屋も清潔で、シーツと枕カバーも取り替えてある。バス・トイレは共同だが、4倍近い金額で中級ホテルに泊まるよりはずっと費用対効果が高い。何よりその宿を気に入った理由は、女性従業員がいて安心出来たことと、宿の従業員たちが我が家の息子をとてもかわいがってくれたことだった。

宿に荷を解くと、さっそく周囲の散策に出た。バザールのメインストリートは、日本の商店街のように、アーケードの下にずらりと商店がならんでいる。アーケードの入り口の構えやデザインが、以前アラブ首長国連邦のドバイで見たバザールのそれとそっくりなのに驚いた。かつてはこの一帯も、アラブ商人のジャンク船がペルシャ湾を行き交う海洋文化圏の一端だったのだ。

日中の暑さを避けるため、バザールの店が開くのは午前中の早い時間と、夕方以降、夜10時頃までだ。11月になっても、ここではまだ日中の気温が30度を下らず、どこもクーラーが稼動している。「イランには四季がある」という言葉をよくイラン人から聞かされるが、それは、春夏秋冬の全ての季節が同時に存在するという意味だ。ここは夏同然だが、テヘランは晩秋、タブリーズなど北西部の都市では、コートが手放せない季節になっている。

もっとも、アフワーズの本当の夏は、こんなものではない。50度近くまで最高気温が上がることもあるという。
バーザールのメインストリートから一歩裏通りに入ると、様々な専門街が広がっていた。靴修理屋たちが古びたミシンを何台も並べる通りがあれば、古着の屋台ばかりが並ぶ通りもある。古い指輪や腕時計のコレクションを収めた小さなガラスケースを路上に並べる骨董街は、男たちのたまり場になっている。
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