千葉県柏市「南部クリーンセンター」(2011年8月撮影)

千葉県柏市「南部クリーンセンター」(2011年8月撮影)

震災がれきの広域処理をめぐって現在も議論が続いている。なぜ廃棄物由来の放射能汚染の拡散を住民が懸念するのか。それには福島第一原発事 故後、ゴミ焼却施設で何が起こっていたのかを知ることが必要である。ここに紹介するのは、焼却施設における汚染が明らかになり始めた2011年8月の千葉 県柏市における状況である。全国に先駆けて放射性物質の扱いに長けた専門業者に委託した同市で何が起こっていたのか。井部正之が現地で取材した。(編集 部)

「飛散なし」と市は主張

よく見ると施設内の床は乾燥してこびりついた飛灰で茶色に染まり、外のアスファルトもところどころ茶色に変色している。この施設ではゴミの投入口付 近を臭気対策で負圧(密閉した施設内の気圧を外より低くすること)にしているものの、シャッターを複数の場所で全開にしている状態でそれが十分に保たれて いるはずがない。

散らばった高濃度汚染灰を集めるようす(2011年8月撮影)

散らばった高濃度汚染灰を集めるようす(2011年8月撮影)

 

これでは台車や作業員が出入りするたびに、飛灰を踏みつけては少しずつ外に持ち出すだろうし、竹ぼうきで掃くたびに微細な粉じんを外部に流出させる ことになろう。あまりにもずさんすぎる。これが本当に高濃度の放射性廃棄物の扱いなのだろうかと信じがたい思いだった。しかもこれが原発内作業もしている 専門業者によって行われているというのだからあきれてしまう。

施設を見せてもらう前、折原所長は、
「排ガスもそうですし、放流水もすべて未検出。なおかつ(施設の)敷地境界や周辺の公園で空間線量を毎日測定しておりまして、ほとんど柏のほかの地域と大 きな数値の差はない。毎日のレベルも少しは変動しますけど変わっていない。ということで、漏れ出しているということはないと思います」
と胸を張っていた。

施設内にはところどころに汚染灰が散らばったままだ(2011年8月撮影)

施設内にはところどころに汚染灰が散らばったままだ(2011年8月撮影)

 

本当に周辺への飛散はないのか改めて折原所長に尋ねた。

「極力出さないようにしてます。毎日工場の周りの空間線量を測ってますので漏れ出てはいないと思っております」

およそ現実を見ようとしない回答にあきれた。前出・山内氏は市の主張を否定する。
「負圧にもせず、入口を開けたまま竹ぼうきで掃いたりしたら、ほこりが舞って外に出て行くに決まっているじゃないですか。飛散しないとはいえないはずです」

柏市の秋山浩保市長にも対応を聞いた。

「ほうきで掃いているようなことがあれば、そういうことがないように徹底しないとダメですね。確認してみます。(灰に放射性物質が大量に含まれると いうことは)初めての事ですから、細かいことでミスがあるかもしれませんので、ご指摘いただければひとつ一つ直していきます」(続く)

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