◆実際は1日半にわたって漏れ続けた可能性が高い

さらに「機械室付近への立ち入りを制限」したというが、これなど13日の午後6時に工事現場などでよく使われる円錐状のカラーコーンを置いてエレベーターを使えないようしたにすぎない。密閉養生をしたわけでもなく、効果は期待できない。

工事停止から7時間半は誰でもそこを通ることはできたし、その後もすぐ手前のエスカレーターや階段を使って駅利用者はごく普通に現場近くを通ってい た。こうしたお粗末な対応ぶりをいかにも「対策をした」との文脈で使ってきちんと事実を伝えないのは、事故の過小評価につながる不誠実な行為だといわざる を得ない。

そもそも現地での試料採取は12日朝だが、分析結果が出るまでに丸1日かかっている。その間は当然ながら漏えいや曝露を防止する措置はない。

その後、名古屋市は13日午後6時半から機械室前のほか、改札前、階段・エスカレーター前など5ヵ所でアスベストの測定を実施し、すべて空気1リットルあたり0.5本の定量下限値未満だったことから安全が確認されたと判断し、翌14日には立ち入り制限を解除した。

ちなみに、発表されていないが、市はその後も継続して測定しており、ほぼ定量下限値未満という(一度だけ同0.22本で定量下限値と同値)。

だが、現状ではアスベストが漏えいした原因も明らかになっていない。

それどころか、飛散が止まっているのは目張りの効果だったのか、あるいは単に工事を停止した結果なのかすらわかっていない。12日朝の測定から翌13日夕方以後の測定までの漏えい状況も不明である。

つまり、現段階の情報では12月12日午前8時から13日午後6時半までの1日半にわたって高濃度のアスベストの漏えいが続いていた可能性があるということだ。その間に駅を利用したり、地上の「排出口」付近を通った人はアスベストを吸ってしまったかもしれない。

とくに機械室から改札あたりはかなり高い濃度だったと想定されるが、明らかになっているのは12日午前9~10時の空気1リットル中710本というきわめて高い濃度のみだ。

この濃度が1日半の間ずっと継続したのか、実際には短時間ですんだのか、あるいはさらに上昇したのか、測定データもないため知るすべがない。
~つづく~
【井部正之】
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※初出「名古屋地下鉄駅構内でアスベストが高濃度飛散 明かされぬ曝露実態と行政の不手際」『ダイヤモンド・オンライン』2014年1月6日掲載に加筆修正

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