「JR西日本の、安全よりも営利を優先する企業体質は変わっていない。それは、誰一人刑事責任に問われていないからではないか」と田村委員長は指摘する。

昨年9月、検察審査会の議決を受けて業務上過失致死傷罪で強制起訴された歴代3社長に、神戸地裁が無罪判決を言い渡した。「事故を予見することはできなかった」というのが判決理由だった。

現在、控訴中だが、検察が唯一起訴した山崎正夫元社長の無罪判決はすでに確定している。誰も刑事責任を問われないことに対して、多くの遺族が理不尽さを感じている。

「営利を優先し、安全対策をおろそかにした企業体質を作り上げた経営幹部による企業犯罪ではないか」という遺族の問いかけに対して、元社長たちは、事故は亡くなった運転士一人の責任だと主張して責任を認めようとはしない。

今の刑法では企業など法人を罰することはできない。だが、企業が果たす役割は大きくなっており、市民生活の安全に関わる企業も巨大かつ複雑になっている。

鉄道や航空機、船舶などの大事故を引き起こした企業などの法人に刑事責任を問える制度「組織罰」の導入を目指して、藤崎さんら遺族や被害者らが勉強会を発足させた。

英国では7年前に企業を殺人罪で処罰する法律「法人故殺法」ができ、以来、鉄道事故が3割も減ったという。

「JR西日本が安全優先の企業になってくれなければ娘の無念は晴れません」と話す藤崎さん。組織罰導入は企業に一層の安全対策を促し、二度と脱線事故を繰り返してほしくないという願いである。

【矢野 宏 新聞うずみ火】

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