◇貿易拡大も浪費でインフラ麻痺
貿易の内実を見てみよう。輸出は大幅に伸びたがその九割は中国向けである。内訳は石炭と鉄鉱石など天然資源の切り売りが七割を超えている。他に売るものな いからであり、逆に国内の火力発電や工場稼働に回すことができなくなって生産に多大な障害が出ている。タコが自分の足を食べているようなものだ。

輸入はどうか。中国からの輸入額の一位は石油。自動車を動かすにも、軍が戦車・飛行機などの訓練をするためにも石油が必要である。また日用品から機 械、工業品材料、自動車、急増している携帯電話機もほとんどが中国からの輸入品だ。13年度の貿易赤字は約9億ドルに達している。

金正恩政権は、発足以来、貴重な外貨収入を金日成・正日父子の新たな銅像建立や、平壌の高層アパートや遊園地、イルカショー施設、スキー場建設、そして核・ロケット開発などに費やしてきた。経済的にはほとんど生産性ゼロの浪費である。

一方で、「先軍政治」を掲げながら、兵士さえ満足に食べさせられず軍内に栄養失調が蔓延している。教員や鉄道員を含め、大部分の労働者には食糧配給は出せていない。市場に並ぶのは民間保有の食糧であり、国が責任を持つべき配給用食糧はまったく確保できていない。

電気事情も酷い。明かりを灯せるのは週に数時間だけというのが地方都市の実情だし、平壌ですらアパートの大半はポンプが動かせず水が出ない。列車が二〇〇キロ程度の距離を走るのに一週間、十日かかるのは茶飯事である。

述べてきたように人々は北朝鮮式社会主義の統制から離脱して市場で商行為をしてなんとか食べている。これは、「食わせてやるから言うことを聞け」という北朝鮮式人民統制が崩れていることを意味する。体制維持のための統治資金にも事欠くような状況なのだ。(続く)
<金正恩政権の対日交渉戦略は何か>記事一覧

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