ミャンマー政府と少数民族武装勢力との間で3年にわたって協議が続いてきた全土停戦協定の調印が15日、首都ネーピードーで行なわれる。ことし7月にヤンゴンで開催された協議で、「誰が協定に調印するか」をめぐって合意に至らず、最終的に8組織だけが調印することになった。(7月22日撮影・赤津陽治)

ミャンマー政府と少数民族武装勢力との間で3年にわたって協議が続いてきた全土停戦協定の調印が15日、首都ネーピードーで行なわれる。ことし7月にヤンゴンで開催された協議で、「誰が協定に調印するか」をめぐって合意に至らず、最終的に8組織だけが調印することになった。(7月22日撮影・赤津陽治)

 

ミャンマー政府と少数民族武装勢力との間で3年にわたって協議が続けられてきた「全土」停戦協定の調印式が15日、首都ネーピードーで開催された。

調印式には、8つの少数民族武装組織の指導者、テインセイン大統領、ミンアウンフライン国軍総司令官、シュエマン下院議長ら体制側首脳のほか、証人として、国内の政治家や日本・国連などの代表が出席した。

証人として予定されていた国民民主連盟(NLD)党首のアウンサンスーチー氏やシャン諸民族民主連盟(SNLD)党首のクントゥンウー氏の姿はな かった。カチン独立機構(KIO)や新モン州党(NMSP)などの主要な少数民族武装組織は、「全組織参加」の方針を堅持し、調印を見送った。

15日にミャンマー政府と一部の少数民族武装勢力との間で締結された「全土」停戦協定は、7章33条で構成される。第5章「政治対話の保証」には、 協定締結後の政治ロードマップが定められ、今後はこれに基づいて政治対話が進められる。日本語訳の全文を掲載する。【赤津陽治】


ミャンマー連邦共和国政府と
民族武装諸組織との間で締結される
全土停戦協定

序文

ミャンマー連邦共和国政府と民族武装諸組織との間で締結される全土停戦協定は、ミャンマー連邦共和国政府と民族武装諸組織との間で、これまでに合意 締結された合意事項をあらためて確認し、より確実なものとして承認し、参加すべき者たちの全参加を可能とする政治対話を通じて、正義と尊厳を基礎とする長 期的に安定した平和をめざす。
この全土停戦協定に調印した我々は、長期的に安定した平和の実現のために、責任の自覚と透明性を基礎に、同協定に含まれる事項を、完遂するまで必ずや共同で実現していくことを互いに誓い合う。

第一章
基本原則

第一条 長期的に安定した平和の構築のために、次の基本原則に則って、実現していくことに合意する。

(A)ミャンマー連邦共和国を、連邦の堅持、民族連帯の堅持、主権の安定を念頭に置き、自由及び平等、正義を基礎とし、パンロン精神に則った、民 主主義、国民としての平等、自決権を完全に保証する、民主主義と連邦制に基づく連邦国家として、政治対話の成果に則り、建設していくこと。

(B)ミャンマーにおいて歴史的に長きに亘って生じてきた軍事衝突を終結させるべく、交渉による解決、政治問題を軍事的に解決するのではなく、政治的に解決する新しい政治文化を育み、軍事衝突を終結させるべく、全土停戦を先んじて実行すること。

(C)多民族で構成される連邦国軍に関する事項を、政治対話において、議題として盛り込み、協議していくこと。

(D)この連邦内に居住する全国民が、民族・宗教・文化・性別などによって差別されることなく、平等な権利を得られるようにすること。

(E)政治に関わる事柄のために宗教を濫用しないこと。政教分離の国を建設すること。

(F)ミャンマー連邦共和国内に居住する諸民族の歴史的背景・伝統文化・文芸・言語及び民族的特質の違いを認め、多民族・多言語の連邦としての特質を、全国民の連帯によって実現していくこと。

(G)長期的に安定した平和の実現をめざし、民族の願いと意思を基礎とし、参加すべき者がすべて参加する政治対話を実施していくこと。

(H)和平協議を行なう者の間の方針の違いを、長期的に安定した平和の実現を希求する誠実な態度で乗り越え、交渉し解決すること。

(I)この協定に明記された双方の約束を遵守し、和平プロセスの透明性の確保、責任の明確化、責任の保証などの方法によって実現すること。

(J)この協定によって生じる発展的機会を、互いにその機会を濫用することなく、協定内容を確実に実現していくこと。

(K)ミャンマー連邦共和国内に居住する国民全体の生命・住居・財産の安全及び国民の生活の向上に努力していくこと。

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