米軍トラックに載せられて運ばれるイラク人の女の子と家族 。2003年4月、バグダッド市内で 撮影綿井健陽(アジアプレス)

米軍トラックに載せられて運ばれるイラク人の女の子と家族 。2003年4月、バグダッド市内で 撮影綿井健陽(アジアプレス)

 

国連子どもの権利委員会への2008年の報告によると、2002年以来、米国はイラクで2400人、アフガニスタンで100人の子どもを拘束してきた。ア フガニスタンでは800人、2008年5月にキューバの米軍グアンタナモ基地に設けられた収容所には21人が収容されていたとする報告もある(53)。

バグダットにあるアブグレイブ刑務所では、子どもに対しても、親に会わせず、教育を剥奪した。さらに、独房での監禁、強かん、犬を使っての威嚇や教 育の剥奪、苦痛を伴う姿勢での拘束という方法が採られた。17歳の少女に対する性的虐待(54)や親に証言させるための手段として、子どもを虐待すること さえ行われた(55)。

アフガニスタンやイラクの子どもたちを殺傷した米軍兵士の中には、「まだほんの子ども(56)」の若者が含まれていたことも想起しておきたい。派遣される米軍兵士には、18歳になったばかりの若者も決して少なくない。

彼らの多くは、ファストフード店での低賃金労働やトレーラーハウスでの生活から脱することを夢見て、米軍に入隊することを「志願」した子どもだっ た。2003年4月にイラクで戦死した18歳の若者は、重量挙げのグローブがほしくて海兵隊に資料請求し、2001年6月に入隊していた。(続く)

※本稿の初出は2014年6月発行の「京女法学」第6号に収録された、市川ひろみさんの論考『冷戦後の戦争と子どもの犠牲』です。

いちかわ・ひろみ
京都女子大学法学部教授。同志社大学文学部、大阪大学法学部卒業。神戸大学法学研究科修了。専門は国際関係論・平和研究。著書に『兵役拒否の思想─市民的 不服従の理念と展開』(明石書店)。共著に『地域紛争の構図 』(晃洋書房)、『国際関係のなかの子ども』(御茶の水書房)ほか。
【以下注】
49 P.W. Singer, 'Fighting Child Soldiers', Military Review, May-June, 2003, p. 26.
50 バクダッドにある米軍戦闘支援病院へ運び込まれた子どもたちのうち、8歳以下の子どもで敵戦闘員と判断されたケースはなかったが、9~17歳では66名中10名(15%)が敵戦闘員とみなされた。Matos, et. al. op. cit., p. e961-962.
51 Matthew Cox, "War even uglier when a child is the enemy, A boy darts for a weapon, and a young soldier must make a wrenching decision, USA Today, April 8, 2003,
52 Center for Emerging Threats and Opportunities Marine Corps Warfighting Laboratory, "Child Soldiers: Implicaitons for U.S. Forces, Seminar Report, November 2002, p.7.
53 Henry A. Giroux, Hearts of Darkness: Torturing Children in the War on Terror, Paradigm Publishers, Boulder/London, 2010, p. 66.
54 Shereen T. Ismael, "The Cost of War: The Children of Iraq", Journal of Comparative Family Studies, Spring 2007; 38, 2, p.354.
55 病気の15歳の少年は、重い水のはいった缶二つをもって走らされた。立ち止まると打たれ、倒れると、服を脱がされ水をかけられた。そこに、ずきんを掛けられたその少年の父親が連れてこられた。彼が、残忍に扱われた息子を前に、証言するよう脅迫されたことは疑いようがなかった。Giroux, op.cit., p.64.
56 バクダットで戦死した18歳の息子をもつ両親が、ブッシュ大統領からのお悔やみの手紙に応えた手紙。Jürgen Todenhöfer, Andy und Marwa. Zwei Kinder und der Krieg (München: Bertelsmann Verlag, 2005、ユルゲン・トーデンヘーファー『アンディとマルワ―イラク戦争を生きた二人の子ども』平野卿子訳、岩波書店、2008年、117頁。

 

★新着記事