◆「ISに見つからぬよう密かに視聴を続けた」

「住民がこぞって衛星受信チューナーやパラボランアンテナを供出」などとする様子を伝えるIS宣伝写真。2016年6月頃から支配地域で一斉に衛星放送機器撲滅キャンペーンが強化された。衛星チューナーを叩き壊している。(2016年・IS写真・シリア・ラッカ)

武装組織「イスラム国」(IS)がイラク・モスルの統治を開始したのは2014年6月。当初、市民は携帯電話も使え、衛星テレビも視聴ができた。ところが社会統制は日を追うごとに厳しくなり、衛星テレビ視聴禁止と機材接収の布告まで出される。イラクやシリアでは一般放送といえば衛星受信を指すため、住民の目耳がふさがれることになった。IS統治下のモスルで、2年半にわたって暮らし続けたモスル大学教員、サアド・アル・ハヤート氏(47)が支配の実態を語る。連続インタビュー第5回目。(聞き手:玉本英子・アジアプレス)

【サアド氏】
私の勤め先のモスル大学の工学部が閉鎖され、職を失った私は家にこもって論文などを書いていました。年老いた母と叔母、私の兄弟2人と、妻と2人の娘の計8人で暮らしました。

兄もモスル大学で教員をしていました。のちに兄の学部も閉鎖されて、仕事がなくなってしまいました。しかし、1年間(2015年6月まで)は、IS支配下であっても、イラク中央政府が支給していた給料を、職場を通じて継続して受け取ることができました。

イラク軍の奪還作戦で、ISが排除された地区。IS支配が終わっても、電気や水道水の供給は不安定で、経済もまわっておらず、厳しい生活を余儀なくされる住民が少なくなかった。(2017年2月、モスル市内で撮影:玉本英子)
モスルを支配下に置いたISは、住民生活がいかに幸せかを宣伝。街路灯に電気が灯っているが、一般家庭や商店では、IS統治以前から供給が不安定で発電機を使っていた。IS統治以降さらに電気事情は悪化した。(2014年・イラク・モスル) IS統治下の状況を話してくれたサアドさんが教鞭をとっていたモスル大学は、イラク有数の名門校。のちにISは、サアドさんの工学部を閉鎖。写真は当時ISが公開したもので、左下の入り口にISの黒い旗が見える。(2014年・イラク・モスル)

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