私たちとって、テレビを見ている間だけは、ISが街中でやっていることを忘れさせてくれるのでした。イラキーヤ、アラビーヤなどのニュースチャンネルをよく見ました。アラブの娯楽チャンネルも家族で見ました。アメリカの英語の映画も見ていました。

接収した衛星受信機器をローラー重機でひき潰している。一方で、ISプロパガンダ映像には、外国衛星テレビ局の映像が多数引用され続け、IS部門や幹部は衛星放送を受信していたと思われる。(2016年・IS映像・イラク・モスル)

衛星放送に代わってISが住民に聴くことを求めたのは、ISラジオ放送「アル・バヤン」だった。左はモスルでのラジオ収録風景。右はアル・バヤンの番組表。宗教番組のほかに、各地の戦況報告などがある。(2016年・IS映像・イラク・モスル)

ニュースを見て、世の中で何が起きているかを知るのと同時に、イラク軍や政府がどう動いていたのか、自分なりに分析していました。ISがモスルを占領したとき、イラク軍は敗走し、それ以降、政治的、経済的にも深刻になりました。テレビを見ながら、イラク軍がはやく奪還して、私たちを支え、ISから解放してくれるよう願っていました。(つづく)

衛星テレビは禁止されたなか、支配地域の町々ではメディアポイントと呼ばれる宣伝ブースが「正しい情報を伝える」として設置される。モニター画面には、IS宣伝映像や戦闘動画、斬首などの処刑映像も上映される。(2016年・IS映像・イラク・モスル)

IS設置のメディアポイントで流される宣伝映像は、小さな町や村では、街頭やモスクでプロジェクターを使って上映した。戦闘へのあこがれや、敵への憎しみを、子どもたちに醸成する役目を果たした。(2016年・IS映像・イラク・モスル)

 

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(9終) IS去ったモスルのこれから(写真9枚)
(8) 当初、ISを受け入れたモスル住民も~「気づいたときは遅かった」(写真12枚)
(7) IS支配下での礼拝とモスク(写真8枚)
(6)「モスル解放」のなかであいつぐ報復(写真11枚)
(5) 衛星テレビ視聴禁止布告~住民統制強まる(写真14枚)
(4) 学校での洗脳恐れ、通学やめさせた家庭も(写真9枚)
(3) 宗教警察が社会統制(写真10枚)
(2)シーア派やキリスト教徒住民への迫害(写真7枚)
(1)たった数日間の戦闘で町のすべてを支配(写真7枚)

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〔イラク現地報告〕イスラム国(IS)支配下のモスル住民に聞く(1)「戦闘員は宗教とはかけ離れた人たち」

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