ザルミーナの長女、ナジバ(20)。母が死刑になってすぐにパシュトゥン人の農村に嫁にだされた。(2002年8月)

 

◆「母さんは売春をした上に父を殺した。死刑になって当然」

5年前、夏の日の真夜中、母の叫び声に気づいたナジバは、両親のいる寝室のドアをそっと開けた。
彼女がつけたランプのともし火で、血がべっとりとついたふとんに父が倒れているのが見えたという。

泥棒が侵入してきて夫を襲ったと、ザルミーナは言った。
だが、ナジバは疑惑の目で見ていた。

母の話しぶりや説明が矛盾だらけだったからだ。
彼女はもうひとつの事実も知っていた。

父の外出中に母が親戚でもない男を家に招き入れていたという。
その男と母が裸で抱きあっているのも、ナジバは目撃していた。

ザルミーナは、楽にお金が入ってくる仕事があるから一緒に家を出よう、と娘のナジバに言っていたという。
「楽な仕事」とは売春のことだ。
それはすでに15歳だったナジバにも理解できた。

ナジバは私の目を見すえながら、はっきりとした言葉で言った。
「母は売春をしたのです。死刑になったのは、しかたありません」

母の死刑を当然のように受けとめているかのような口ぶりだった。
ナジバは母を亡くしたあと、この村に嫁ぎ、女児を産んだ。その子はザルミーナの孫にもあたる。

いま、その子を脇に抱えながら私の前にいる彼女の口から出た言葉に、私は複雑な気持ちになった。
一方でナジバは殺された父のことも嫌っていた。

父はザルミーナや娘たちに対し暴力ですべてを抑えつけようとしていたという。
夫の暴力もザルミーナに犯行を決意させた原因のひとつだったのではないか、そう私には感じられた。(つづく)【玉本英子】

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(10)女子刑務所で 写真5枚
(9)タリバンは巨大な悪なのか 写真4枚
(8)タリバン支持の村に暮らす次女 図と写真3枚
(7)長女が語った意外な言葉 写真4枚
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