「1982年以前」の在住者との条件についても、尼崎市では「おおむね1955年から1975年の間」市内に在住と幅を持たせている。大阪府堺市では公式的には「1990年以前」の在住者だが、「多少過ぎている方も受診していただいている」という。大阪府泉南市も同様に「1990年以前」以降の在住者についても「アスベストに関して、胸部の健康状態に不安がある」場合は肺がん検診で独自に対応している。

また、定員を100人と定めているのも異例だ。ほかの実施地域の募集をみてもとくに定員を決めているようすはない。当初180人と定めていた大阪市でも、実際にはそれを超えたとしても対応する方針を明らかにしていた。

この健康調査は環境省の事業でそこから都道府県に委託され、さらに市町村に再委託される形で実施されている。環境省資料ではたとえば「1990年以前の在住者」とされていても、運用レベルで工夫し、柔軟に対応している自治体が少なくない。さいたま市もそうした実態に合わせた対応が必要だろう。

「家族の会」らは「アスベストと自分の被害を結びつけていない方が圧倒的に多い。市は先行事例に学んで、対象区域の拡大に今年度から取り組むなど、被害者に寄り添った対応をしていただきたい」と訴える。

「アスベスト対策の先進自治体」と市議会でたびたび主張してきたさいたま市の姿勢が問われている。

【井部正之/アジアプレス】

【合わせて読みたい記事】

■ <アスベスト被害>国の周知不足で2人が請求権喪失(井部正之)
■ <アスベスト被害>実態調査すら結論ありきか?(井部正之)
■ <学校アスベスト問題>教員ら178人が被害も労災認定わずか(井部正之)

★新着記事