2021年1月18日の手紙。仮放免になったらジャガイモを育てスリランカ料理を眞野さんに作りたいと書かれている。

◆手紙には救いを求める悲痛な叫びが

2021年10月に刊行した『ウィシュマさんを知っていますか?』には、仮放免後に身元引受人となるはずだったシンガーソングライター・眞野明美さん宛にウィシュマさんが出した手紙を全て収録している。

収容場の中で彼女は、眞野さんとの平穏な日常生活を夢み、未来への希望を抱いていた。

「私はあなたと一緒に過ごすことを夢見ています。だってあなたから多くのことを学べるからです。……私がそちらに行ったら、いろんなことの先生になってもらえますね。私は裁縫も学びたいし、たくさんお手伝いできます」

しかし、収容場の過酷な環境の中で彼女はみるみる衰弱していく。1月28日夜には吐血。2月2日の手紙には、眞野さんに助けを求める悲痛な叫びが乱れた文字で書かれている。

「彼らは私を病院に連れて行こうとしません。私は彼らに監禁されているからです。私は回復したい」

「すべての食物や水も吐いてしまう。どうしていいかわからない。今すぐに私を助けてください」

 

2021年2月2日の手紙。「今すぐに私を助けてください」と英語で訴えている。

◆無関心という“罪”

 眞野さんたち支援者の必死の抗議もむなしく、入管側は「詐病」とみなし適切な医療を受けさせなかった。

その1ヶ月後、ウィシュマさんは亡くなった。33歳だった。死の直前まで、点滴を打ってほしいと何度も訴えていたという。

日本の入管施設で収容者が死亡するのは、2007年以降18人にのぼる。なぜ入管で「人」が死なねばならないのか。不法滞在とは、死の報いを受けるほどの罪なのか。

国連人権委員会に「国際法違反」と指摘される日本の無司法・無期限の収容体制こそ、裁かれるべき違法行為ではないのか──。

ウィシュマさんたちの死が問いかけている。無関心こそ私たちの罪である、と。(劉 永昇)

 

劉 永昇
「風媒社」編集長。1963年、名古屋市生まれ。早稲田大学卒。雑誌編集、フリー編集者を経て95年に同社へ。98年より現職。2018年創刊の雑誌『追伸』同人。

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