◆制裁とコロナで96億ドル以上失う

貿易総額の約9割を占める対中国貿易は、経済制裁強化前の16年には輸入28億3343万ドル、輸出25億3928万ドル、総額53億7271万ドルを記録したが、20年は輸入4億9105万ドル(16年比83%減)、輸出はわずか4800万ドル(同98.1%減)、総額5億3905万ドル(同90.3%減)に激減した。

21年は輸入2億6016万ドル(16年比90.8%減)、輸出は5787万ドル(同97.7%減)、総額3億1803万ドル(同94.1%減)だった(いずれも中国税関総署発表統計による)。16年を基にすると、18~21年の4年間分で約96億ドル=約1兆円も貿易収入を失った計算になる。経済制裁とコロナによるのは言うまでもない。

それだけではない。コロナ前の19年に推定1.7億ドルほどあった観光収入はゼロになった。中国、ロシアへの労働者派遣で得ていた収入も、確かな統計はないがコロナの影響で相当落ち込んでいるはずだ。

当然、国家財政は悪化した。昨年、金正恩政権は、とうとう紙幣の発行を中断するに至る。印刷用の特殊な紙とインクを中国から輸入できなくなったのだ。国営企業や銀行が資金不足に陥り、政権は窮余の策として8~9月に国産の紙とインクで刷った粗悪な「トンピョ」という臨時金券を発行した。

新たに発行された臨時金券「トンピョ」。写真を入手した脱北者から提供を受けた。(アジアプレス)

 

今、多くの国営工場で稼働が低迷し、住民への電気と水の供給すら滞っている。それでも金正恩政権はミサイル発射実験に資金を注ぎ続けている。

厳寒の中で人々を糞尿集めに駆り立てながら。

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