◆「強く」開閉、投げる実験除外

また大きな塊の落下について、「震災のことを挙げましたが、それ以外にも実際にはシビアな事態というのは、いっぱい起こるんだということを想定すべき。僕が主張したのはそういう意図です」(同)と補足した。

じつは扉の開閉やボールを投げる実験のやり方は懇話会でも議論になっている。1月末の第2回懇話会で伊藤委員は「ドアの開け閉めを強くやる」などと2回主張。ほかの委員からの反対はなかった。にもかかわらず、「強く」がいつのまにか実験計画から外され、実験時にも主張したが無視されたことになる。

ボールを投げる実験でも、東座長が「ボールをちょっと入れてみるとか」と最初から強く投げない想定で説明したのに対し、伊藤氏は「ボールを投げ込むとかです」と強く投げる想定で反論。だが実験計画から除外されたわけだ。

今回の実験では、石綿を含む吹き付け材のある天井裏により大きな振動を与えるであろう、扉を「強く」開け閉めすることは反対意見もなかったのに除外され、意見が割れたボールを強く投げることは座長の弱く投げるものだけが採用された。つまり、石綿飛散を不正に操作して低くしようとした疑いがある。

市学校施設課は「通常閉めるようにやってくださいとは言いました」と指示を出したことは認めたが、不正操作は否定した。

実験計画の細部は公開の会合で議論されず、水面下で決められた。伊藤氏は実験の詳細は「聞かれてもいない」としており、市と一部の委員の間で決まった可能性がある。市は「最終的には各委員に回して、細かい仕様は確認してます」と否定。

伊藤氏に改めて尋ねると「どんな強度で開け閉めするかなど細かいことは(渡された実験計画で)決まってなくて、当日のことですよ」と明かす。

反対がなかった強く扉を開け閉めすることが実験計画から除外されたのはどう考えてもおかしい。またボールを投げる実験のように委員の間で意見が割れたのであれば、強弱それぞれ実験するのが当然だ。それを実験計画にも明記せず、現場でこっそり「強くしないよう」指示していたとすれば、やはり不正操作ではないのか。

会合後、堺市在住で「アスベスト患者と家族の会連絡会」の古川和子さんは「(会合で流した実験の)映像みたときにドアの開け閉め自体、上品だなあとおかしいと感じた。そうしたら小さい女の子が開閉するようにといわれたと伊藤さんがバラしてた。ボール投げだって、ふつう男の子なら思い切り投げますよ。大きめのボールは蹴飛ばしたっておかしくない。過小評価ですよ」と批判した。

同連絡会の傍聴者はもう2人いたが、いずれも実験がおかしいと感想を述べた。筆者も会場で実験映像をみたが、石綿が極力飛散しないようなやり方で実験しているようにしか思えなかった。

筆者の取材に、市は今回の実験が「普段の子どもたちの動きなのかと思います」と自画自賛した。だが、不正操作疑惑にも十分な説明がされているとは言いがたい。これでリスク評価して、本当に保護者の理解が得られるのだろうか。

【訂正】記事タイトルとリードに誤りがありました。堺市の再現実験について問題提起した懇話会委員は「実験の想定が不十分」と指摘しており、「不正操作」とまでは主張していないため、タイトルの「懇話会委員が証言」、本文リードの一文〈市の懇話会で委員が証言した。〉をそれぞれ削除します(12月2日午後4時更新)。

 

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